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『高嶺の花』石原さとみは“病み”ヒロイン、野島ワールド全開だった!

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『高嶺の花』 オフィシャルサイトより

『高嶺の花』 オフィシャルサイトより

 711日にスタートした、野島伸司脚本・石原さとみ主演の連続ドラマ『高嶺の花』(日本テレビ系)。華道の名門に生まれた令嬢で“高嶺の花”・月島もも(石原)と、自転車店主・風間直人(峯田和伸)との格差恋愛に発展するというストーリーで、初回視聴率は、11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とまずまずの好発進だった。

 初回では、ももと直人、ふたりの出会いに加えて、それぞれのバックグラウンドが描かれた。石原さとみが演じるももは、野島作品のヒロインとしては定番の“病み”を抱えた女性というキャラクター。複雑な過去を背負い明るく振舞いつつも傷を負っている女性を、石原がキュートかつコミカルに演じていたのが印象的だ。

 29歳のももは、華道の名門・月島流の長女として生まれ、容貌が美しいだけでなく華道の才能にも恵まれた女性だが、結婚式当日、婚約者の吉池(三浦貴大)が二股をかけ相手の女性が妊娠していると判明し、破談。心が深く傷つき、自律神経に支障をきたしたももは、味覚や嗅覚も失い、精神的に不安定になってしまう。結果、ももはストーカーのように吉池をつけ回し警察から接近禁止命令を食らった。

 月島流家元でももの父・市松(小日向文世)や、異母妹・なな(芳根京子)はそんなももを心配するが、市松の後妻でももにとっては継母のルリ子(戸田菜穂)とももはあまり仲がよろしくない様子。しかも月島流、新興流派の宇都宮龍一(千葉雄大)が月島流乗っ取りを企てていることや、市松の手の調子が芳しくないなど、いかにもゴタゴタ要素が満載だ。野島氏得意の悲劇に発展する可能性を大いに感じさせる初回であった。

「相手を憎めないのはいい女」論

 かたや、峯田和伸演じる39歳の直人は母子家庭育ちのアラフォー男性。高校卒業後は自転車店を切り盛りしながら、かれこれ20年、自宅療養する母・節子(十朱幸代)の介護を続けてきた。性格は優しく穏やか、母の介護もあって恋愛とは縁がなく女性とのコミュニケーションも苦手だが、商店街の仲間からは慕われていて、愛称はぷーさん。これもまた、野島氏が得意とする聖者のような純粋な男性像である。

 ある日、自転車を大破したももが泥まみれで直人の店に来店して2人は出会う。高飛車に振る舞うももだが、直人は動じることもなく穏やかに接し、ジャージを貸すなど親切にする。ほどなくして直人の母は亡くなり、ジャージ返却と修理された自転車の受け取りでももと直人は再び接触。そして商店街の喫茶スナックで、直人や直人の仲間たちに、“なんちゃってバツイチ(結婚式前日に入籍していた)”になった経緯やつきまとい騒動を明かし涙を滲ませるももに、直人は「いい女だ……」と一言。亡き母から教わった“こういう女がいい女”を語り出すのだった。

 直人(の母)が言うには、「相手を憎めないのはいい女」である。

「自分が傷つけられた時、怒る人と哀しむ人がいます。怒る人は憎む人です。自分は棚に上げて相手をただただ攻撃する」
「悲しむ人は愛の人です。静かにただ時を止めて哀しみます」
「愛と憎しみ、愛憎。うちの母親が愛憎半ばなんて表現があるけどそんなことはあり得ない。愛してたら憎まない。憎めないんですあなたのように。それはちゃんと愛がある、いい女だからです」

 つまり、元婚約者を悪く言わないももは“いい女”である、というわけだ。90年代ならともかく2018年の現代、この手の持論には感動どころか異論だらけだと思うが、ももの心には響いたようで、そのままカラオケで盛り上がり、直人宅にお泊りするほど一気に距離を縮める。今後の展開としては、紆余曲折を経て、華道の名門・月島流の長女であるももと、庶民で奥手な性格の直人が結ばれ、また紆余曲折……と一筋縄ではいかないものになりそうだ。良くも悪くも、THE・野島伸司といえる作品の予感がする。

石原さとみは強い

 ちなみに、妹・ななが大人しくおしとやかなタイプなのに対して、ももはサバサバ系で言動や振る舞いも自由奔放。テンションが高く、喜怒哀楽も激しいキャラである。月島流として表に出る時は凛々しいが、素顔は破天荒タイプのお嬢様のようだ。今回の役柄を「ウザい」と嫌悪する視聴者もいるだろう。ただ、彼女が内面でどんなことを考えているのかはまだまだ見えてこない。うっすら孤独を帯びているようでもあり、それは結婚破談とはまた別の事情があるのではないか。

 このキュートでありながら憂いも感じさせる多様な表情の表現は、今の石原さとみにしっくりくる。10代でデビューした石原さとみはこれまでに様々な役を演じてきたが、彼女自身のまとうイメージは刻々と変化している。真面目な委員長や一生懸命なドジっ子から、愛され美女、有能な仕事人……まさに女優として七変化を見せてきた。

 直人宅や商店街のセット、登場人物の台詞の端々、曲のセレクトなどあちこちに90年代臭(もはや野島伸司ワールド臭)が見え隠れするが、その世界観において石原さとみの存在感がひときわ異彩を放っていたのは確か。ももはおそらく野島ドラマならではのジェットコースター的波乱に翻弄されることになるだろうが、石原がどのような女性像を形作っていくのか、期待して見守りたい。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

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