独立行政法人「日本スポーツ振興センター」(JSC)は9日、中学校や高校のクラブ活動中に熱中症で死亡した学生数を部活別に発表。その結果、昭和50年から平成29年のおよそ40年間で、クラブ活動中に熱中症で亡くなった学生数は146人だったことがわかった。
さらに、野球部が37人と際立って多く全体の約25%。次いで、ラグビー部(17人)、柔道部(16人)、サッカー部(14人)、剣道部(11人)、山岳部(9人)となった。JSCは野球部員の死亡率が高い原因として、「競技人口の多さ」や「練習時間の長さ」と分析している。
観客、選手、そして審判までもが熱中症に…
現在、全国高校野球選手権が甲子園で開催されている。先月、各地で行われた地方予選では、応援団の生徒や保護者が熱中症で病院に搬送されたというニュースを多く耳にした。だが、その流れは炎天下に慣れている選手たちも例外ではなく、大会2日目の沖学園(南福岡)-北照(南北海道)でも、試合中に選手が体調を崩し起き上がることができなくなり、試合が止まるという一幕が見られた。
また、炎天下にさらされているのは、選手や観客だけでなく審判も一緒である。大会6日目の日大三(西東京)-折尾愛真(北福岡)では、主審を務めた永井審判員が7回終了時に熱中症のため右脚がつり、8回から西貝審判員に交代した。この試合では、熱中症対策として7回終了時に水分補給を促す「休憩タイム」が初めて適応された。そのおかげもあってか選手たちは問題なくプレーできたが、審判が熱中症になってしまったのである。
スポーツ庁は柔軟な対応を呼びかけてはいるが…
JSCが指摘する通り、野球部は競技人口が多いため、必然的に熱中症になる生徒も多くなる。さらに、高校野球は注目度が非常に高く、問題が顕在化しやすい。だが、他のクラブ活動でも熱中症は猛威を振るっており、茨城市内の中学校でバスケットボール部の男女6人が搬送されたり、宮城県内で開催されたソフトテニスの大会で女子高校生7人が搬送されたりと、問題は野球部に限定できない。夏は野球部だけでなく、様々なクラブで大きな大会が開催されるため、あらゆるスポーツの場で適切な対策が求められる。
スポーツ庁は先月20日、各都道府県の教育関係機関に対して「運動部活動における熱中症事故の防止等について(依頼)」を通達。
「気象庁の高温注意情報が発せられた当該地域・時間帯における屋外の活動を原則として行わないように明記する等,適切に対応すること」
「高温や多湿時において,主催する学校体育大会が予定されている場合については,大会の延期や見直し等,柔軟な対応を行うこと」
上記のように、その日のコンディションを見ながら、クラブ活動の中止や大会の延期などを柔軟に対応するよう呼びかけている。だが、この通達はあくまで“お願い”止まりで、強制力は弱い。連日のクラブ活動中の生徒が熱中症を訴える状況を考えると、まだあまり浸透していないようにも思える。
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