これまでの大学入試センター試験の後継として、2021年1月から始まる「大学入試共通テスト」。新テストで導入される英語民間試験をめぐり、滞りない実施が懸念されるような動きが相次いでいる。
6月18日には南風原朝和元東大教授や、大学入試センター元副所長の荒井克弘氏、羽藤由美京都工芸繊維大教授ら5人の学識者が、制度には欠陥があると中止を求め、高校や大学の教員ら約8000人分の署名を添えた請願書を参衆両院に提出した。
7月2日には、民間試験団体のひとつ、TOEICが成績提供や実施会場の確保など、受験向けの対応が困難で間に合わないと離脱を表明した。
試験の扱いについて大学の足並みもそろわず、成績不問で実質採用見送りとする国立大は全体の4割にも上る。
「このまま導入を強行すれば、多くの受験生が制度の不備の犠牲になり、不合理な経済的、時間的、精神的負担を強いられる。入学者選抜が大きく混乱することも危惧される」と、反対派学識者グループは訴える。
こんなにも疑問や批判が続出している英語民間試験活用とは、いったいどんな制度なのか。
大学入試から教育をアップデートする試み、「高大接続改革」
英語民間試験活用は、新しい時代にふさわしい学力を育もうと国が進める大学入試改革、「高大接続改革」の構想から生まれたアイデアだ。
グローバル化の進展や人工知能技術をはじめとする技術革新などに新たな価値を創造していくためには、従来の「知識・技能」だけでなく、「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を育成・評価することが必要となってくる。しかし、大学入試が旧態依然のままでは中高の教育は変わらないので、大学入試のあり方を変えることにより、高校教育も変えていこうというのが「高大接続改革」だ。
こうして、従来のセンター試験を廃止し、2021年度より新しい「大学入試共通テスト」が始まることとなった。
50万人規模の英語の4技能を測るため、既存の民間試験にアウトソーシング
共通テストの目玉は、記述式問題の導入と、英語の4技能の評価。グローバル化が進展する社会では、外国人など多様な人々と協働したり、主体的に行動をしたりする力が必要となることから、従来の「読む、聞く」だけでなく、「書く、話す」のアウトプット技能も加えた4技能を身につけさせるのが狙いだ。
ただ、50万人規模の大集団で「書く、話す」の評価を一斉に行うのは困難なため、すでに4技能評価のある民間の8つの検定試験が活用されることとなった。このうちTOEICは対応が困難ということで撤退したため、現時点ではケンブリッジ英検、英検CBTとS-CBT(新型英検)、GTEC、IELTS 、TEAP 、TEAP CBT、TOEFL iBTの7つが使われることになる。
既存の民間試験を利用するアイデア自体は悪くないのかもしれないが、問題は制度の実施と運用のされ方だ。「現時点ではまだ多数の欠陥があり、トラブルのない公平な実施は難しい」と、反対派の学識者たちは指摘している。国立大も多くが実質的な採用に二の足を踏んでいる。
物議を醸している民間英語試験活用の問題点とは、具体的にどんなものなのか?