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ピル普及を阻む「自然体=健康なはず」という無意識な信仰

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 もうひとつ、今回の講演であらためて気づかされたのが、日本ではナチュラル信仰が根強いということだ。健康こそがデフォルトであり、ナチュラルな状態と無意識に信じてはいないだろうか? 1997年、現役厚生大臣を務めていた小泉純一郎はピル解禁に消極的な姿勢を示していたが、その理由は「ピルは、女性の生理機能を、薬によって狂わせるわけで、正常な状態を異常にして効能を発揮する」という考えからだ。この時の小泉氏と同様に、「ピルは不自然に排卵を止めて避妊するための薬」というイメージは、現在でも世間的に多数派なのではないだろうか。

 つまり、ピルは「健康な肉体」に「不自然な薬剤(化学物質)」を投与し、人為的に生命の誕生を阻む薬だ……という誤解である。

 確かにピルは排卵を止める働きがある。しかし「排卵する=正常/健康の証明」ではない。そもそも生理が来るのは体が健康な証拠であるとか、生理痛は誰でもあるもので我慢して乗り切るべきだとか、少々話が脱線するが「出産は痛みを伴ってこそ愛情を得られる」とか、女性の痛覚に関してはかなり鈍感なのが日本社会。風邪の諸症状にはそれに合った風邪薬を服用し、胃が痛ければキャベ●ンを、急な下痢にはス●ッパを、夏に股間が痒くなったらデリ●アエムズを塗るだろうに、生理時の不快な症状やPMSには「女の子の日だから機嫌が悪い」だの「甘え」だのと我慢を強いるのはおかしな話なのだ。

 風邪や下痢と同じように月経困難症が認知されれば、その治療薬であるピルへの「ナチュラルでない」という不信感も解消するのではないだろうか。
(ヒポポ照子)

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