「育児に熱心な男は出世しない」発言の大炎上に見る男性の本音

【この記事のキーワード】

THE・懐古主義

 こちらの記事にもあるように、web版では掲載されていないが、弘兼氏の主張の根底には、ジェネレーションギャップによる若者世代への悲嘆がある。日本経済がまだ豊かでない時代に生まれ、「明日は今日よりもっとよくなる、よりよい未来を築いてやる!」と野心を燃やして仕事に情熱を注いだ団塊世代ゆえ、生まれたときから快適な生活をして「あえて頑張らなくても“ソコソコの幸せ”を手に入れられる」若者世代はガッツがないと感じるらしい。弘兼氏はそうした現状を「僕らとしては淋しい」と嘆く。いやいや、「淋しい」からって、「モーレツに仕事を頑張ってこそ男」なんてイデオロギーを他人に押し付けるもんじゃないだろう。

 もしかしたら弘兼氏は、20~30代の男性サラリーマンに向けてハッパをかけたつもりなのかもしれない。しかし、彼の主張は完全に時代に逆行している。

 今、「会社で働く」のは男性だけではない。女性も教育を受けて大学進学することが珍しいケースではなくなり、「腰かけ」に限らない就職をする。仕事に夢を持ち、やりがいを見出すのは男性だけの特権ではない。女性を労働力として“活用”すべき、という政府の指針も明らかになっている。内心では専業主婦を希望しているが長引く不況のために致し方なく夫婦共働きを選択している……というパターンの女性もいるにはいるが、「男は仕事、女は家庭」と大胆に役割を分担してまわる世の中ではないのだ。いずれにしても働く女性は一般的な存在となっている。

 そうなると、働く男女が結婚し子供をもうけた場合、夫婦で助け合って育児をしていくことが当然の流れとなるが、現実には、男性が育児休暇を取ることもまだまだレアケースであり、特に子供が小さい頃は母親が育児の担い手になる場合がほとんどである。

 筆者のまわりで実際に育児休暇を取った男性は1人だけ。参加しているママ友のLINEグループでは、「まだ小さい子供が病気になった時、仕事を休まなければいけないことが本当に大変だ」、という悩みがたびたび議題になる。ママ友たちは、「会社に申し訳ない」という気持ちや、「仕事が溜まって後で埋め合わせるのがキツイ……」との憂いを書き綴る。子供が病気になって保育園からお迎えコールが来たとき、仕事を切り上げて迎えに行き、病院を受診させ、看病をするのはだいたいが母親だ。

 実際のところ、1986年に男女雇用機会均等法が施行されて30年あまり経つ現在でも、母親になった女性には育児という大仕事がずっしりと長い間のしかかっており、働き続ける以上は仕事と両立させなければならない。他方、男性は父親になると「育児と仕事の良質頑張ってね」ではなく、「奥さんと子供のために、いっそう仕事を頑張ってね」と声をかけられる。仕事にまい進して家計を支えることこそを「父親の甲斐性」と捉えている人はまだ多いのかもしれないが、本当に母親たちの求めていることは、それなのだろうか。母親は「子供を持ったからには母としての自覚を」と期待されるが、父親も子供を持つと決めたからには、仕事と家庭の均衡を取る努力をするのが筋ではないだろうか。イクメンという言葉も一般化して久しいが、こんな言葉ができること自体、育児参加する男性の少なさを物語っている。

 夫婦が協力すれば育児は滞りなく進む……というほど単純な話ではないが、母親だけが子育てを担うことを「当然」と見なす社会では、少子化の進行に歯止めはかからないだろう。では男親が母と同じように育児参加するためにはどうすれば良いか、すなわち、雇用側の意識改革、これが第一だ。次に、育児を「家庭内の仕事」に矮小化せず、社会制度によって産み・育てやすい仕組みを整えることも重要だろう。

1 2 3

「「育児に熱心な男は出世しない」発言の大炎上に見る男性の本音」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。