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大人の官能映画ではなく、夢見る少女向けのちょいエロ王子『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』

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 しかし、それでいいのだ。これは少女漫画、つまり、限りなく女子の妄想を具体的に描いている映画だから、理想の王子様は、かっこよくてお金持ちでミステリアスででも超優しくてちょっとエロい、こうでなくてはいけないのだ。ちょいエロまじりの少女漫画を描く漫画家たち(たとえば新條まゆとか宮城理子とか)の描く男性キャラってこういう感じだろう。官能小説、と聞いて団鬼六を想像するオトナの世界とは、違うのだ。

 原作者、脚本家、監督が女性という今作は、そのことを正確に心得ていて、だから、女の子の妄想にはちょっとだけ過激にエッチなことも含まれるという事実も承知。ふたりのプレイシーンは、一般女性に「これくらいならたまには彼氏にやってみてほしいかも」と思わせる絶妙さで、確かにこれは男だけに決定権が与えられていたら創造できない世界かもと感心できる。このソフトとハードの良い按配が1億人の女心を掴んだと言うのだから、男子が見たとしても、女子の妄想の世界を勉強するのにも役立つ映画かと(意外に思えるラストも、あくまで「妄想」だから、これでいいのだ)。

 が、しかし。肝心の性行為シーンである。

 SMどうこうよりもまずアナが処女であるということに驚いたグレイは、限りなくジェントルに彼女の初体験を演出する。そのシーンは、オシャレな音楽と、美しく丁寧な撮影、ふたりの真摯な演技により、立派な恋愛映画の一場面として落ち着いて見られるものなのだが、日本の映倫さんが、全裸で絡むふたりをほぼ真っ黒にボカシを入れてしまったもんだから、なんだかよくわからないものになってる始末。特にAV的に性欲を刺激するわけではないセックスシーンにこれはだいぶ残念、多分このボカシの決定をした方は男性なんだろうな。セックス=エロ、とは限らない、美しき妄想の乙女の世界、それこの映画の神髄である。

 と、書いた矢先に、2月25日(水曜日)から限定的に無修正版の本編が公開されるとのことが発表された。セックスシーン自体で映画全体のイメージが変わる作品ではないが、ボカシ無しの方が逆に普通の映画として落ち着いて楽しめるかも知れません。

※本文に一部誤表記がありましたので修正いたしました。

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