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家族から捨てられる父親。夫婦こそ最大のリスクヘッジになるのにもったいない!

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―― 先ほど、父親のいないところで母親が「ゴキブリ」と呼んでいる、という話もありましたが。

水無田 男性の孤立問題について考えます。OECDの報告によると、日本の男性は世界で一番孤独だそうです。現役でばりばり仕事をしていないと、なかなか他人とのつながりができない。職場というのは、どんなに緊密な関係を築けていても、会社を辞めた後は、次第に距離が離れてしまうものです。女性が家事や育児によって「時間貧困」に陥っているとしたら、男性は「人間関係の貧困」に陥っているんですよね。それでも定年まで仕事にだけ打ち込むことが、人間の人生として総合的に見た場合、幸福なことと言えるのかどうか。

―― 仕事人間で40年生きていると、会社を辞めた途端に友人がいなくなって、家族とも取り返しがつかないほど冷え切った関係になっているかもしれない。

水無田 しかし、心理学・教育学を専門としているアメリカのスーザン・D・ハロウェイの『少子化時代の「良妻賢母」』(新曜社)によると、妻の不満は、長時間労働を強いる会社ではなく、単純に家事をしない怠惰な夫の性格に向かうそうです。これは私の個人的な感慨なんですが、ライフステージごとの不満って、そのライフステージで解消しないと一生引きずるんですよね。子どもがまだ小さい、一番大変な時期こそ夫に手伝ってほしいのにまったく手伝ってくれなかったら、30、40年経とうが、今際の際でも不満は残っていく(笑)。

―― 東レ経営研究所の渥美由喜さんによる調査では、妻の夫に対する愛情は、出産後に急落しているそうです。その後、愛情が回復するグループと、低いままを維持するグループがある。これは出産後の夫婦関係が、妻の夫への愛情を決めるということなのかもしれません。少し前に「熟年離婚」というワードが流行りました。新婚時代から積もり積もった不満が爆発して、50~60代になって離婚へ。切り出された方は取り残されてしまう。

水無田 熟年世代に限りません。若い世代では今、協議離婚が増えていて、子どものいる夫婦の場合、ほとんど母親が親権をとります。離婚が家族を壊すといいますが、私が思うに、実質的には家族の「父捨て」です。男性は、離婚後にケア資源を失うケースが多く、孤独死リスクも跳ね上がります。ですから、離婚はシングルマザーも大変ですが離別夫も大変です。そうならないために一番重要なのは、男性も家庭責任を共有する意識です。長時間労働でとても家事をやる時間がないと思う男性は多いかもしれませんが、いずれ仕事は退職する日が来ます。でも、家族との生活は別居や離婚しなければずっと続きます。地域コミュニティへの参加も、家族単位です。日ごろから、もっと総合的に自分の人生や日常生活のバランスを考えておく必要があります。家事育児への参加は、その一歩です。

家事育児への参加って、上手く結果を出すには得点圏打率みたいなものがあると思うんですよね。いつもスタメンで試合に出ているのは妻だとしても、ベンチウォーマーの夫が代打に出された時に、きちんと成績を残せることが大切なんです。結果を残すためには、普段から試合の流れをみて、ヒットが期待されているのか、バントが期待されているのか、きちんと把握していないといけない。年に一回アウトドアに連れて行ったり、引退後に海外旅行に行くとか、そういうことじゃないんですよ。実際、夫の育児参加で一番妻が嬉しいのは、「子どもに手が離せない時に、家事をしてくれる」ことという調査結果もあります。たとえば、泣いている子どもをあやしている時に、さりげなく洗濯物を畳んでおいてくれるとか、離乳食作りで手が離せない時に大人用の食器を洗っておいてくれるとか……。「一緒にいる空間を快適にする」ことに積極的に参加する人を、女性は高く評価しますから。

―― 必要とされる時にホームランを打てるようになれば、「ゴキブリ!」なんて言われなくて済むかもしれないですよね……。

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