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夫が100万人に1人のガンに罹ったら? 家族が患者にできること

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入院生活を耐えるための工夫あれこれ

―― 抗がん剤は順調に打てましたか? どうしても体に負担がかかるので、白血球数がなかなか増えなかったり、肝臓に負担がかかりすぎて、抗がん剤が打てない状態になることもあったのではないかと思いますが……。

まき 夫はもう40代です。若い人のようには回復しない。セカンドオピニオンの医師にも「病気は治った、でも体はボロボロ、ではいけないから、数値を見ながらやることになるでしょう」と言われました。その数値がなかなかよくならないので、次の抗がん剤が打てず、入院期間が延びてしまう。

―― 僕もそのせいで半年以上入院が延びてしまいました。入院生活ってそれだけでストレスなのに、副作用で苦しいし、常に他人の気配がするし、体力的にも精神的にもツラい。治療を続けていくと、予定されていた退院時期がどんどん伸びていくからさらにイライラする。漫画ではクロとらさんが鬱っぽくなって、感情が突然爆発してしまうシーンもありましたね。

まき 「治療鬱」だそうで、カウンセリングと投薬も受けました。長い入院生活では気力がどんどん削がれていきますし、生活習慣もぐだぐだになります。ベッドに根が生えたように、すべてがおっくうになる。心の健康のためにも、ノルマを決めて病院内を歩くなども必要だったのかもしれません。

不安になると藁にもすがる気持ちで、怪しげな治療法や高額なサプリに手を出してしまう人もいるようです。夫も医師の許可の元でサプリを飲みましたが、医師にはやんわりと「気休め程度に思って、あまり入れあげないように」と言われました。はまっちゃう事例も多いんだろうなと思います。「病気は治ったのに、家庭は壊れてしまった」という結果になったら元も子もありません。怪しいものは、気をしっかり持ってきっぱりと追い払ってほしい(笑)。

―― 騙そうと近づいてくる人もいれば、厚意で勧めてくる人もいますからね。まずは標準的な医療を信用すること。そのためにもお医者さんとコミュニケーションをはかるのが大事なんだと思います。

まき おっしゃるように善意で怪しげな情報を推して来る知人には、むげにも出来なくて、やりとりに体力を削がれました。自分もこれまで「よかれと思って」いろんな新情報に首を突っ込んで、病人家族に勧めてきたなあと反省しました。むこう(病人側)から「何かいい情報を知らないか?」と言われたときだけお節介するくらいで、ちょうどいいのかもしれません。

―― クロとらさんの様子をみて、意識してやってあげていたことってありましたか?

まき 何度も「代わってあげたい」「かわいそうに」と口につきそうになりました。夫は息子とサッカーをするのが大好きなので、走れなくなるのが可哀想で、私がこの病気になればよかったとも思いました。見ているより、自分が苦しいほうが気持ちの置き所がありますし……。

ですが、絶対にそれは口に出すまいと思っていました。実際には代わってあげられないので、口に出してもただの自己満足になってしまう。夫は想像以上によく病気と闘いましたから、薄っぺらい「代わってあげたい」を言わなくて本当によかったと思います。

夫が病気に打ちのめされそうなときは、気をそらせるような提案をするようにしました。先ほどの「サプリやなにかに手を出さない」ことと矛盾しますが、サプリを飲ませたり、ヒーリングに連れて行ったりもしています。病気の渦中では何度も「折れそう」「心がもたない」と思える数日があります。そこを乗り切るために、目先を変えるものを投入した感じです。サプリもヒーリングも、具体的な効果を期待していたというよりは、ポジティブになれる要素の少ない長い入院期間を、なんとか耐えやすくするための小道具と思っていました。そこを入り口にさらに高額なセールスをされるものや、ネガティブな脅しをされるもの、医療の標準治療を否定したり、健康に害がありそうなものは慎重に避けるべきだと思います。

夫が大部屋に疲れてるなと思ったときは、一週間個室に移ることもしました。病院って、生活して楽しい場所ではないですよね。なんとか明るく乗り切れる工夫があるなら耐えやすいと思います。でもすべては、退院後の生活を見据えて、退院後の人生のバランスを崩さないようにやらないとね。【後編に続く】
(インタビュアー・構成/カネコアキラ)

まきりえこ
漫画家、イラストレーター、ブロガー。著書に『小学生男子(ダンスィ)のトリセツ』(扶桑社文庫)『小学生男子(ダンスィ)のトリセツ2』(マガジンハウス)、イラスト担当で『#アホ男子母死亡かるた』(アスペクト)など。アメブロにて、子育て四コマブログ「ちくわの穴から星☆を見た」を更新中。http://ameblo.jp/pohoo/

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