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家族がガンになる前に、知っておきたいお金のこと

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病気や障害は「お気の毒に」じゃない

―― 近しい人間が大病になったとき、精神的にも経済的にも慌てふためかないためにもぜひ『夫が骨肉腫になりました』を読んでほしいです。ズーンとくる話ですけど、深刻になりすぎずに読めるというのもすばらしいと思います。退院後、家族の関係って変わりましたか?

まき 家族の仲がよくなりました(笑)。

入院前はどこの家庭とも同じように夫婦間でいろいろな問題を抱えていました。些細なことの積み重ねで溜まった澱のようなものですが、なかなか家族一人ひとりの努力や気の持ちようでは解消できないものですよね。

でも、闘病というぎりぎりの経験を通して余計な思い込みが外れ、夫や息子の生の姿が見えるようになったんです。彼らの「生きたい」「家族を愛している」という気持ちがダイレクトに伝わってきて。それまで「しっかり者の妻と叱られてばかりの夫と息子」という役割分担だったのですが(笑)、彼らには私とは全く違う強さがあるんだと改めて見直しました。

こういっては何ですが、病気のおかげで家族が再生して、本当の人生が鮮やかに戻ってきたように思います。読者からも「読後、単身赴任の夫からの電話につい優しくした」「息子の寝顔をことさらいとおしく感じた」などと感想をいただけて、漫画を描いてよかったなと思いました。……悔しいのは、病気の前にこういう気持ちになれなかったことですかね(笑)。本を読む仮想体験を通して、家族をもう一度見直すきっかけになってくれたらと思います。

―― 最後に、messyの読者にアドバイスをいただけませんか?

まき 夫の病気を知らせたら、周りから「実は私も家族がガンだったのよ」と言われることがたくさんありました。これまで遠くの、無関係なものだと思っていた病気や死は実はすぐ隣にあるものだったんだと思うようになりました。いつ誰の身に降りかかってもおかしくないんだなと。そして、病気や障害と生きていくことはけして「負け組」とか「お気の毒に」とか言われることではないことも、知ることが出来ました。

夫は大病をし、足の機能の一部を失いました。家族の生活も変わりました。失ったものは取り戻せませんが、得た物も多くあります。「笑って生きていくのは簡単じゃないけど、不幸の日々にも絶対笑える幸せな瞬間はある」ということを知ったことです。

きっとこれからも、転んだり泣いたり、起き上がったり、笑ったり、どたばたしながら生きて、そして老いていくんだろうと思いますが、この夫の闘病で、何があっても笑顔になれる瞬間はあるはず、そう思うことができました。女の人生は簡単じゃありません。夫の都合で生活がガラッと変わることもある。介護の問題もある。先を考えれば不安です。でも今の若くて勢いのある時期をせいいっぱい送っていればきっと大丈夫。老いや岐路がやってきてもきっと笑えるたくましい自分が育っているはず、そう思います。
(インタビュアー・構成/カネコアキラ)

まきりえこ
漫画家、イラストレーター、ブロガー。著書に『小学生男子(ダンスィ)のトリセツ』(扶桑社文庫)『小学生男子(ダンスィ)のトリセツ2』(マガジンハウス)、イラスト担当で『#アホ男子母死亡かるた』(アスペクト)など。アメブロにて、子育て四コマブログ「ちくわの穴から星☆を見た」を更新中。http://ameblo.jp/pohoo/

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