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パートナーシップ証明書から考える「結婚」って何だろう? 牧村朝子さんインタビュー

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日本とフランスの反対派は同じことを言っている

―― 同性パートナーシップ制度の条例案が渋谷区議会に提出されることになってから、反対派がデモを行うなどの動きが見られました。フランスでも同様の動きはあったのでしょうか?

牧村 そうですね。渋谷区のデモよりももっと大きいものがありました。渋谷区とフランスのデモを同列に語ることはできませんが、反対派が言っていることって面白いように同じなんですよね。「家族制度が壊れてしまう」とか「同性婚を認めたら獣姦とか一夫多妻制も認めるようになる」とか「同性同士に子育てをさせたら性的虐待をするだろう」とか。

でもね、「そもそもフランスでの反対デモに参加してる人って、同性婚に反対している人は少なかったんじゃないの?」って思っています。象徴的だったのが、あるキャッチコピーの中に、「私たちは仕事が欲しい。同性婚じゃないんだ」というものがあったんです。この人は、失業対策よりも同性婚を先に認めた政府に対して怒っているのであって、同性婚そのもののことはあんまり考えてない。もちろん「同性婚は本当に良くない!」って考えている人も少なくはなかったんですけど。

―― 日本同様に法整備が整えられていなかった時代もあり、また反対派も少なくはなかったわけですよね。それがどうして同性婚を認めるようになったのでしょうか?

牧村 フランスって「自分たちが人権という概念をつくったんだぞ!」って自負があったんですよね。

―― 18世紀にフランス革命が起き、「フランス人権宣言」が出されたという歴史がありますからね。

牧村 ですから、世界的にLGBTや同性愛が人権問題として議論されていく風潮の中で「人権という概念をつくった国が、同性婚を認めてないなんて……」って空気があったんだと思います。だから他の国からの影響が強かったんでしょうね。

フランスは勝ち戦だったんですよね。フランスは日本と違って国民が直接投票で大統領を選ぶでしょう? 同性婚を認めたオランド大統領は、出馬した時点で「同性婚制度を作ります!」って公約を掲げていたんですよ。そのオランド大統領が国民投票で受かったということは、もう勝ち戦ですよね。でも一年くらい国民に分かる形で具体的な動きを見せなかったので、「なにやってんの感」はありました(笑)。焦らされて、焦らされて、今か今かと待っていたら「ドーン!」と法案が出て可決したんです。

―― 日本の場合は、そこまで順調には行かないかもしれませんね……。怖いな、と思うのが不十分であれパートナーシップ証明書が認められ、問題が可視化されたことで、変化を恐れた人たちの揺り戻しが起きてしまうことです。フランスではこのようなバックラッシュはありましたか?

牧村 うーん、一時期ありました。殴られて顔がボコボコになった男性カップルとか、女性同士のカップルが水を掛けられたりとか。同性婚が認められたあとは結構大変でした。きっとPACSのときも同じようなことがあったんだと思います。

―― 牧村さんご自身もフランスで生活されていてそういう経験はあるんでしょうか?

牧村 ありますよ。妻と道を歩いていたら変なことを言われたり。でも日本だってそうですよね。男同士が手をつないでるだけでツイッターに晒されたりとか。

―― 今まで以上に差別的な行動がみられるようになってしまったら元も子もないと思うんです。それを回避する、あるいは少しでも差別を解消していくために何が出来ると思いますか?

牧村 「どうしてそう思うの?」って質問を、メディアでも個人レベルでも重ね続けることなのかなって思います。同性愛者にヘイトを持っている人たちは、PACSや同性婚が公に認められたことで、自分の意見を言った瞬間に差別主義者扱いされてしまうことへの恐怖を持っていると思います。「同性愛者は性的虐待をする!」「家族を壊してしまう」ときには「人類が滅亡してしまう!」と本気で信じている。それを笑わないで、「どうして?」と質問を重ねて、相手の話を引き出すことが大事だと思うんですよね。

結果的に返ってきた言葉が私に理解できないものだったということは往々にしてあります。お互い日本語で話しているはずなのに「わかんない! 通訳欲しい!」って思うことも(笑)。でも、フランスでも日本でも「自分の意見を聞いてくれる人がいるんだ」って思っているのは感じます。それだけ、自分の意見が言えなかったのだと思います。

でもね、これはすごく手間がかかりますし、そもそもどうしてマイノリティ側に説明責任を負わせるんだという批判もあると思います。ただ、別にマイノリティだけじゃなくて差別意識のない人が「どうして?」と質問したっていい。マイノリティとマジョリティの問題ではなくて、ヘイトを持っている人に、持っていない人がどう接するかという話だと思います。

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