子供がいても、楽しく働いていい――『37.5℃の涙』作者・椎名チカ×駒崎弘樹

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『37.5℃の涙』のこれから

駒崎 3巻で完結しちゃったのかな、と寂しく思っていたのですが、これからまた連載を再開されるんですよね。これからどんなことを描きたいと思っているんでしょうか?

椎名 桃子とお母さんの関係が描ききれていなかったので、そこをちゃんと描きたいと思っています。今のところお母さんはただの悪に見えるかもしれませんが、もしかしたら桃子のお母さんにも悩みがあったのかもしれない。それを知った人が「お母さんも大変だったんだな」とか「それでもやっぱり許せない」とか、いろんな見方をしてもらえたらうれしいです。

駒崎 それは楽しみですね。僕としては、全然育児に理解のない政治家を描いてほしいですねー。「子供は親が見るべきだろう?」なんていう政治家と桃子の上司である柳が対決するとか(笑)。

椎名 あはは(笑)。

あと描きたいと思っているのは、男の人が子育てすることを許さない状況についてです。「子供の面倒を見たいので休ませてください」と言ったら上司から「お母さんはどうした?」って当たり前に言われてしまうことって少なくないと思うんですよ。漫画にしたら分かりやすく伝わるかなって。

駒崎 子供の領域っていろいろな課題があると思います。利用者さんのところに行ったら、軽い障害を持った子供がいるかもしれない。子供の障害をお母さんがなかなか受け入れられずにいるかもしれない。そうした角度をつけて、いろいろなテーマでオムニバス的に描いていってほしいです。『コウノドリ』(講談社「モーニング」で連載中の産婦人科を舞台にした漫画、既刊8巻)みたいに、長く続いてほしいですね。

椎名 ありがとうございます。これからも頑張っていきます。……ちなみに駒崎さんって家事はされますか?

駒崎 うちは担当制で、僕は掃除担当ですねー。

椎名 我が家は今年から「気づいたほうがやる」方式にしました。

―― 家事って慣れないと上手にできないですよね。「掃除機は床の溝に沿ってかけるの!」って怒られたり。

駒崎 我が家は「服を脱いだらすぐにハンガーに掛けてくれれば溜まらないのに!」って僕から妻に言うことが(笑)。

椎名 あはは(笑)。指摘の仕方って難しいですよね。最近ルンバを買ったんですけど、とっても便利なんですよ。おかげで床にモノを置かなくなったし、子供にも「ルンバにおもちゃが吸われちゃうよー!」って片づけをさせられる(笑)。

駒崎 いいですねー。食洗機は買いました?

椎名 欲しいんですけど、「ちゃんと洗える気がしない」って夫が反対していて。

駒崎 いやいや、手で洗うより綺麗ですから! 僕が今まで買った家電で1番か2番に愛しているのが食洗機ですね。僕から言ってあげますよ!

椎名 ぜひお願いします(笑)。
(企画・構成/カネコアキラ)

駒崎弘樹
1979年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」と考え、2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを開始、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする。2010年からは待機児童問題の解決のため、「おうち保育園」事業を展開し、小規模認可保育所として政策化される。2012年、一般財団法人日本病児保育協会、NPO法人全国小規模保育協議会を設立、理事長に就任。現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子供・子育て会議」委員、東京都「子供・子育て会議」委員等を務める。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)等。一男一女の父であり、子供の誕生時にはそれぞれ2か月の育児休暇を取得。

椎名チカ
神奈川県出身。第59回小学館新人コミック大賞入選。「アタ シが部屋にあげる理由。」(Cheese!2007年3月号増刊)にてデビュー。代表作に「37.5℃の涙」(1~3巻)、「青の微熱」(全3 巻)、「12歳からの秘密」ほか多数。4歳になるひとり娘の子育てをしながら、Cheese!にて 「37.5℃の涙」を連載中。

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