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悩めるシンママ・今井メロを救える者はいないのか

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「メロはおかしいから」で済むことではない

 12歳で史上最年少プロスノーボーダー認定を受け、2006年には18歳でトリノオリンピック出場を果たした今井メロ。幼少期から父親のスパルタなスノボ教育を受け、厳しいスノボ練習に明け暮れていたが、思春期になり、「普通の女の子として当たり前の環境」を与えてくれない父親に恨みを募らせるようになっていったことを自伝で綴っている。実母は幼少期に離婚し、身近に甘えられる存在はいなかった。

 常にスノーボードを第一に考えて生活するよう教育され、父親に罵倒され殴られて育ってきた彼女は、その「スノーボード」を失ったときに、生活する術を見つけることができず、著しく生活能力を欠く女性に成長していたのではないだろうか。

 「母は強し」とよく言われるが、母親になればどんなに弱い女性でも肝の据わったスーパーママに変身できるわけではない。子供を産んだからといって、いきなり人格者になるわけでもなければ、苦手だった家事が得意になったり、早寝早起きが辛くなくなったりするわけでもない。そして、人間は「努力すれば強くなれる」というものでもないのである。

 まして今井メロは、統合失調感情障害という精神疾患を抱えている。また、男性と交際・結婚しても長続きせず、結局シングルで子育てせざるを得ない。未熟児で誕生した長女は体調を崩すことが多く、長男についても「自閉症かもしれない」とブログで明かしている。長男は2歳を過ぎても周りの子供たちのように喋ることができず、医師に「およそ一年、言葉の成長が遅れている」と診断され、療育手帳の申請を促されている。療育手帳とは、知的障害者に発行される障害者手帳で、東京都や横浜市では「愛の手帳」と呼ばれるものだ。

 彼女が長女を施設に預けていることを「育児放棄」と揶揄する輩もいるが、彼女がまったく何の葛藤もなく子供を手放したとは考えにくい。過去には、長女の発育の遅れについてブログ読者から気軽にコメントされたくない、と悩む気持ちを吐露していたこともある。

 育児中の母親は、何気ない会話の中で、「●カ月にしては小さいわね」「まだ××できないの?」などといった言葉をかけられるだけでも、気に病んでしまうことがよくある。よその子供と自分の子供を比較し、成長の遅れを感じて焦る、という悩み相談は、ネット掲示板でも非常に多い。彼女も同じように、一人で悩み、苦しんでいただろうことは容易に想像できる。

 以前、彼女の著書をレビューする機会があり、【周囲に相談しても誰も助けてはくれず、「自業自得」とバッシングされてしまう……そんな彼女の「生き辛さ」が、「どうしたらいいのかわからない」という叫びが、同書からは痛いほど伝わってきた】【移ろいやすく脆弱な彼女の心を周囲の人間が支えてあげてほしいと思う】と書いたが、タレント活動をマネジメントしていた芸能事務所のスタッフは、「文春」記事を見る限り、すでに彼女を見限っている。「今井メロという突飛な女のすることだから」と色眼鏡で見ず、「自らも子供も病気を抱えた一人の母親」として見れば、何らかの支援が必要なのは明らかだろう。

 しかし困窮する多くの母親は、誰・どこにどう頼れば問題が解決するのかを知らないのではないだろうか。結果、たった一人で奮闘しようとしてがんじがらめになってしまう。メロのブログには、「母である以上しっかりしなきゃ…」「これからも私は生き様つらぬいてみせる! それが、私 今井メロだから!!」とポジティブかつ抽象的な言葉が並ぶこともあるが、何をどう頑張れば事態が好転するのか……。

 折しも、メロと同じトリノ五輪で辛酸を舐めたフィギュアスケーターの安藤美姫も、シングルマザーとして出産し大きな話題になった。安藤のケースは病気や貧困を抱えているわけではないにしろ、核家族化がここまで広がった現代、事情あるシングル家庭への「理解」と「支援」について、一から検討すべき時代になっているのかもしれない。
(文=ヒポポ照子)

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