芸能界での“枕営業”、つまり、仕事を与える側の人間と寝ることが売れるためのステップアップになるというエピソードは都市伝説的に語り継がれてきた。テレビなどで現役グラビアアイドルが「私はやってないけど、知り合いには経験者がいる」と話すことも多い。グラビアアイドルの小泉麻耶が、事務所移籍後に、元所属事務所のスタッフから「枕営業を強要された」と告発した事件もあった(この騒動は結局、被害届取り下げで鎮火した)。
槙田のTwitterアカウントが誰にどのようにして不正に乗っ取られたのか、彼女やPASSPO☆メンバーが実際に「付き合ってもない相手とエッチさせられ続けた」のか否か、現時点では不明である。しかしこの件および、淫行容疑で逮捕された元芸能事務所社長の事件に関して、「どうせ芸能界なんてそんなところだろうと思ってた」「もし乗っ取りじゃなくて本当はこの子が暴露したんだったら、この子殺されちゃうんじゃないの」などとネット掲示板は盛り上がっている。さらに、「今までPASSPO☆に興味なかったけど、動画見たら普通っぽいマジメそうな子じゃん、こんな子がきもいおっさんとセックスやりまくりってまじでムラムラしてやばい」等々、ポルノとして性被害を消費する者もいる。
枕営業が実際行われているかどうか、つまりセックスと引き換えに仕事(報酬)を得る交渉が行われているかどうかについて、その証明をすることは困難だ。
まず、性行為によって仕事が発生したと実証できるような契約書は存在し得ない(まさか芸能事務所がテレビ局スタッフや広告代理店社員などキャスティング決定権を持つ側の有力者に対して「うちのアイドルや女性タレントとセックスする代わりに、仕事を入れてください」と文書にして願い出て、これまた文書によって契約をとりつける……など出来ないだろう)。アイドル側が売春を強要された、騙された等と主張してもその証拠がなければ自由恋愛だったと見なされてしまう。当該アイドルが18歳未満であれば、田代容疑者のように立件され逮捕に結びつくが、それ以上の場合は「買春した人間」は罪に問われない。「売春を斡旋・提供した人間(すなわち芸能事務所側)」に関しては、売春防止法違反に抵触し刑事罰に問われる可能性もあるが……。
しかし、「仕事をして賃金を得るため」だったり、「管理者から強制されて断れず」だったりで本人の自由意思に反した性行為を行うとしたら、それは本人にとって性被害と言えるものだ。そして管理売春は法律で禁じられている。にもかかわらず、望まない性行為によって被害をこうむった側(主に女性)が、その事件の露呈によってさらにポルノコンテンツとして消費される現実があることに途方に暮れる。
5月11日、警視庁が池袋の女子高生ビジネス店『JK見学クラブ アキバ観光 池袋作業所』の元経営者ら3名を労働基準法違反容疑で逮捕したが、15日発売の週刊誌「フライデー」(講談社)が、その店の営業内容を“スクープ撮”して掲載している。ミニスカートを履いた制服姿の女子高生たちが、スカートの中を見せながら黙々と折鶴やビーズアクセサリーを作成する様子をマジックミラー越しに客の男性たちが鑑賞する……というサービス内容だったこの店。客は追加料金を払えば、指名した女子高生に、正面に座ってもらうこともできる。そうやってパンツが丸見え状態になっている女子高生たちの姿を、マジックミラー越しに撮影した写真が3枚、同誌には掲載されている。こうした事件すら、ポルノとして消費されていくだけなのだろう。
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