『親なるもの 断崖』で話題沸騰中の漫画家が描く「スーパーのレジの人なるもの」

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 「レジるのが好きで好きで好きでたまらない」ベテラン・ネコ先輩や、友情を育んだ同期・イズミちゃん、やたら色っぽい声のシラユキ先輩、完璧なプロレジスターとして尊敬を集める無表情のチーフなど、登場人物たちも魅力的。一日に300人以上のお客様と接する“THE・接客業”のレジスターさんたちですから、マンガエピソードにも事欠かないのか(いやいや、実は苦心してヒネり出しているのか?)、スキャンミスやら名指しのダメ出し、しばしば起こる商品カゴぶちまけ事件、夏場に氷の世界と化すスーパー内での冷え対策、年末の大混乱、制服を脱いだレジスターたちの素顔などなど、どのネタもささやかなことを描いてあるだけなのに見ごたえがあります。

 さて、皆さんにも行きつけのスーパーはありますか? 好きなレジ打ち担当さん、っていますか? 私の行きつけは、自宅と最寄り駅の間にあるスーパー・Mなのですが、好きなレジ担当さんの顔が数人パッと思い浮かびました。パッと頭に浮かぶ程度には頻繁に通っていて、かつジロジロ彼らのことを眺めているんですよね……。Mのどこが好きかというと、彼らの間に「あ・うんの呼吸」が成立していると実感できるところでございます。たとえば「レジ後ろに行列ができて混雑していても焦らず、かつテキパキ対応してくれるところ」。Mには3つのレジがあり、1つのレジを1人が担当(サッカー台までカゴを運ぶのはセルフです)。5人以上の行列が並ぶと誰か1人が焦りの表情を見せたりするのが普通ですが、Mではアイコンタクトで瞬時に3人の思考が通じるのか(?)誰もパニックにならず淡々と商品スキャンをしていくのみです。その、「お客様への過剰な気遣い」が見えないところが好みなのです。

 そんなレジ打ち担当さんの中でも一番、「この人がいるときは、その列に並びたい!」と思わされる神担当者がSさん。おそらく大陸出身の女性だと思われるのですが(この行きつけスーパーの夕方時間帯のレジ打ち担当さんは大多数が外国人女性です)、品物をカゴから出してバーコードスキャンして新しいカゴに並べていく一連の作業をする手指の動きが実にしなやかで、さながらピアニスト、思わず毎回見とれてしまうのです。『レジより愛をこめて』を読んでからというもの、Sさん含むMのレジスター様たちに以前よりずっと敬意を抱くようになりました。私は今日もMに寄って朝食用のパンと卵を買って帰るでしょう。
(下戸山うさこ)

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