「いい人材が欲しい」企業がやるべきこととは NPO法人 虹色ダイバーシティ代表・村木真紀さんインタビュー

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近年、LGBT(L:レズビアン、G:ゲイ、B:バイセクシュアル、T:トランスジェンダー)などの性的マイノリティに関する取り組みに対する注目が高まっています。しかし、性的マイノリティが働きやすい環境が整っている企業はいまだに多くありません。社員がセクシュアリティにかかわらずいきいきと働く職場をつくるには、どのような対策が必要なのでしょうか。企業向けに性的マイノリティに関する研修会などをおこなう「特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀さんにお話を伺いました。

職場でカミングアウトするリスク

――そもそも「性的マイノリティ」といっても、その言葉には多様な性が含まれるんですよね?

村木 はい。最近よくメディアに出てくる言葉は「LGBT」ですが、現実にはLGBT以外のアイデンティティを持っている方も多く、性のあり方は本当にさまざまです。たとえば、Xジェンダーという「女性でも男性でもない性自認を持つ人」や、Aセクシュアルという「特定の人に恋愛感情を抱かない人」もいます。LGBTはマスコミで取り上げられることが増えましたが、それ以外の性的マイノリティについてはまだあまり知られていません。まずは、性のあり方はとても多様なものだということを理解することが大切です。

――性的マイノリティの人々は就職活動時にどのような困難を抱えているのでしょうか?

村木 採用担当者が性的マイノリティについてよく知らない場合に、当事者が面接等でカミングアウトすると、「(性的マイノリティの人は)うちの会社では前例がないから」という理由で不採用になる事例がありました。すでに働いている人が、カミングアウトをきっかけにイジメの対象になったり、辞めさせられてしまったりすることもあります。そのリスクを考えると、多くの性的マイノリティは就職活動時にカミングアウトすることができません。カミングアウトの壁があると、「履歴書やエントリーシートに自分が望む性別や名前を書けない」とか、「家族構成を聞かれたときに、同性パートナーのことを話せない」といった問題が生じてくるわけですね。

――自らのセクシュアリティを隠し通して内定をもらったとしても、働き始めてからさまざまな問題が生じるのでは?

村木 その通りです。ただでさえ、異性愛者の振り、トランスジェンダーではない振りをするのはストレスになりますが、セクハラになるような周囲の差別的言動や性的マイノリティになんの配慮もない就業規則など、働く上でのバリアとなるものもたくさんある。結果として、心を病み、退職せざるを得なくなってしまう人も多くいます。

もっとも緊急度が高い問題は、「現状は、性的マイノリティが働きづらい職場環境だ」ということを、各社の従業員の相談窓口となるべき人事部門、産業医や産業カウンセラーなどの保健スタッフが認識していないこと。これでは、当事者が、就業上、何か困ったことがあっても、どこにも相談できません。性的マイノリティの多くは、職場の相談窓口に相談やカミングアウトをせず、他の理由を言って辞めていくので、「社内に性的マイノリティがいる」ということすら把握できていないことが多いんですね。

――なぜ性的マイノリティの方々は産業医などに相談できないのですか?

村木 性的マイノリティの多くは、日常的に、自分たちが冗談やからかいの対象になっている場面を見聞きしています。いくら守秘義務があると言っても、産業医や産業カウンセラーに話しても大丈夫なのか、ちゃんと聞いてもらえるのか、確信がもてないのです。また、「相談することで、性的マイノリティであることが社内にバレるかもしれない」という恐怖感もあると思います。

――たとえ就職できても、周囲の理解がなければ勤続は難しいわけですね。

村木 はい。職場の誰にも自分の問題の核心を相談できないまま、休職・転職を繰り返す性的マイノリティは数多くいます。そして、現在の日本では、度重なる転職は貧困につながるリスクが高い。どんどん厳しい状況に追いやられてしまうんですよね。

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