こちらの気持ちとしては、サンドラの願いを断る人々の気持ちもわからなくはなかったはずだし、さすがにアポなしで急に家に行くのはどうなんだと思わなくもなかったのに、映画が進むにつれ、人間の善意と誠意にすべてを賭けるという、シンプル極まりないサスペンスに引き込まれ、サンドラのハッピーエンドを強く願うようになる。
情緒不安定なサンドラの心は、もちろん、断られたり、酷い言葉を投げられたりするたびに折れまくり、もう仕事なんてしなくていいと自暴自棄になり殻に閉じこもりそうになる。そんなとき、彼女の傍で、100%サンドラの味方であり、彼女の支えであろうとしてくれる夫・マニュとの夫婦愛が、この映画のもうひとつの絶対的な希望だ。
取り乱したサンドラに何を言われても、愛する者として、彼女の不安を理解し、協力することを当たり前に引き受ける夫の姿は、あまりに優しくて、4カ月のセックスレスくらい許してやってよとサンドラに一言かけたくなる。
何度も挫折しかけ、それでも夫の存在と言葉に救われ、説得を続けるサンドラの姿に、同僚たちの思いにも徐々に変化が現れ始める。
やがて月曜日になり投票が行われ、その結果がどうなるのかは大いなるネタバレなのでここでは控えるが、観賞後、彼女と一緒にこの週末を過ごせたことを、後悔はしないだろう。
徹底して地味な装いのマリオン・コティヤール同様、今作は大袈裟な音楽や派手なCGなど一切使われない、地味で質素な作品だ。それでも見る者の心をおおいに掴むのは、同僚の善意と誠意に賭けたサンドラ同様、監督がわたしたちのそれを信じて映画を作っているからだろう。
誰が悪いわけでもないが上手くいかない世界は、スクリーンのこちら側も同じだ。この世界のままならなさを、映画が解消することは出来ないが、それでも映画には出来ることがある、と思わされる一本だ。
1 2