未婚化・少子化の問題は、古い価値観が邪魔して進まない。イデオロギーではなく価値観を持つべし!
日本の人口が減り、急激な少子化が進むのは随分昔から分かっていたことですが、少子化問題の解決が進まない理由はどこにあるのでしょう。「こんなにも深刻な問題に対して、なぜ日本の政治家は騒がないのか」と海外の学者に言われたことがあるという古市氏が、小泉氏に問います。
小泉 価値観の問題があると考えています。少子化の問題を語るときには、「イデオロギーは要らないから危機感を持ってくれ」と言いたいですね。ワークライフバランスの話には、「家族のあり方」という、それぞれの人生観・価値観・歴史観などと切り離せず、論理的に割り切って考えることが難しい部分があります。(政治家の中にも)「日本にとって望ましい家族のありかた」を強固に持っている人たちがおり、その価値観を変えなければ何も出来ません。
ある問題に対して合理的な選択肢を淡々と取り続ければ解決できることもある。だったらそれをやればいいんです。価値観では無く危機感を持ってもらうためには、見たくない現実や漠然とした課題を、数値データで可視化することで議論していく必要があります。
「第三子支援」、未婚者にはリアリティ無さ過ぎ。まずは未婚・第一子支援をしっかり。
いよいよ話は具体的な施策の話に移ります。
ちなみに小泉氏、最近は政府の会議で「それでは少子化対策については、小泉進次郎くんに早く結婚してもらうということで」と締めくくられたこともあるとか。結婚をしていないと未婚化・少子化について語れないという風潮もありますが、「でも政治家はほとんど結婚していますけど、少子化対策の話が進んでいないから、あんまり(少子化問題を語る上で未婚・既婚は)関係ないんでしょうね」とバッサリ。仰る通りです。
小泉 少子化問題を解決する政策の中に「第三子支援」(2人の子どもを持つ家庭が3人目を産み育てやすいよう支援すること)が挙げられていますが、僕は「第一子支援」の方向に変えていきたいんですよ。とはいえ実は独身の僕には、第一子支援も遠過ぎます。まず結婚、次に1人目、2人目、やっと3人目ですから。
日本は結婚しなければ子供を産まない社会です。ですから、まずは結婚の支援と第一子の重点支援が必要でしょう。第一歩を後押しすることが必要だと考えています。
僕があり得るんじゃないかと思うのは、消費税を上げるとき、10%ではなく11%にし、その1%を目に見える形で使うこと。1%上げれば約2.5兆円の税収です。これは第一子の教育費・医療費を無料に出来るだけの税収になる。どこに使われているか明確だし、ただ10%に上げるよりも理解が得られるのではないかなと思います。
古市 いいかもしれませんね。日本は他国と比べ、消費税が高い国ではありませんが、消費税が高いと思っている人の割合は多い。その理由は、何に使われているか分かりづらいからです。
小泉 また、クールビズの様に、法律ではないかたちで政治がリーダーシップをとってアクションを起こし、世の中の認知や国民生活の常識を変えられる取り組みはないものかと考えています。何かいいアイディアないですか。
青野 ベビーカーを畳まないまま電車に乗ることについて、議論が盛り上がったことがありましたよね。あれは象徴的かもしれません。「畳め」という人には「やってみろ! 畳めるかい!」って言いたい。寝ている子を起こして抱っこして、暴れますよ。よっぽどベビーカーに寝かしつけておいたままの方が迷惑になりません。
ベビーカーを押している人は、日本の未来を育てている人です。その人に配慮できないなんてあり得ない。
古市 実は、既に国土交通省は「ベビーカーを畳まずに電車に乗ることを推奨します」と公式に発表しています。そういうことを広めたり、そういう空気を作ることを政治家にはやって貰いたいですね。
青野 社会を動かすときは、価値観を入れ替えることが重要です。子供を連れているお母さん・お父さんが苦労する世界に未来はありません。子供を育てる人に投資できる社会でないといけない。
ただそれは、独身者や子供を持たない夫婦を攻撃する事ではありません。色々な人たちがいていいわけですから。社会として「ここを守っていこう」という全体のビジョンと、多様性の両立が大切です。
小泉 子供が木に登ったりどろんこになって遊んだり、秘密基地を作ったり。日常に子供がいることが当たり前になれば、子供を産むことに対する不安も和らぐと思います。そういう支援をしていけたらいいですね。
クールビズの様に、政治主導でできるアクションはすぐには思いつきませんでしたが、これからも考えていきたいと思います。
全体を通して3時間以上にも及んだシンポジウム。スペシャルトークセッションはその一部ではありますが、個性的な登壇者による新しい切り口で「未婚化・少子化」を考えることが出来ました。
私を含め来場した参加者にとって、なかなか真剣に向き合う機会のないこの問題を、もう一度自分なりに考えてみようと思うきっかけになったのではないでしょうか。
(此方マハ)
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