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少子化なのになぜ待機児童? 「育休退園」問題から考える

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少子化なのにどうして保育園に入りづらい?

『「子育て」という政治 少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(猪熊 弘子/角川SSC新書)

『「子育て」という政治 少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(猪熊 弘子/角川SSC新書)

 前述のように、待機児童がいない自治体もある。待機児童数が多いのはほとんどが都市であり、首都圏1都3県(東京・神奈川・埼玉・千葉)と、近畿圏(大阪・兵庫)に集中しているようだ。だが、【人口比率で考えれば、大きな“国全体”の問題になっている】(「子育て」という政治)。

 その理由として、少なくとも以下の5つのことが上げられる。

(1)共働き親の増加

(2)シングル親の増加

(3)地方自治体の財源不足

(4)保育士不足

(5)定員枠の問題

 

 まず(1)。男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年のこと。2015年現在、最終学歴を問わず、学校を卒業して実家で「家事手伝い」の肩書きを得る女性は絶滅危惧種である。就職先が見つからず、アルバイト生活をしているとしても、働いていることに変わりはない。そして結婚し出産したからといって「専業主婦」の選択をとる夫婦もスタンダードではないのである。ともに非正規雇用で、共働きでなければ食べていけない夫婦もいるし、出産を退職の契機にせず、産後職場復帰する女性の数は明らかに増加傾向にある。女性の雇用促進と就労支援という社会の動きに沿って、共働き親が増えるのは当然の帰結だ。

 次に(2)だが、単純に離婚件数の推移を見れば、90年代後半~00年代にはそれ以前より増加している。平成25年度の人口動態推計によると、2013年の離婚件数は23万1383組。未成年の子がいる離婚件数は約14万組(子の数は約23万人)で、03年のピーク約30万人からは減少している。親権に関しては、「妻」が84%、「夫」が12%。未就学児童がいる夫婦が離婚をすれば子を引き取ったほうの親が就労と育児の両方を担うため、保育園を必要とするのは当然である。

 (3)に関しては、1981年~1994年の期間は、バブル好景気の影響で「男性稼ぎ手モデル」が家庭の主流となり、保育園の入所児童数は減少を続けていたという。この時代、“一時的に”、共働き夫婦が2人で家計を分担しながら子供を育てるという価値観が薄れ、専業主婦が流行った。これにより、保育園の数も83~93年まで減り続けた。だが95年に、政府は初めて待機児童数を発表することとなる。そして04年、小泉内閣の民営化推進により、公立保育所の運営費が、国庫負担金制度から一般財源化され、各自治体に予算配分が委ねられた。このことを同書では「国から公立保育所整備に関するお金が来なくなったのだから、市町村の予算は圧迫されるようになり、市町村が新たに公立保育所を作るのが難しい状況を生み出した」と指摘している。

 結局、保育を必要とする児童の数に対して、保育所の整備が追いついていない。特に、(4)保育士の確保は現場で喫緊の課題となっているという。

 「保育士は低賃金重労働」という話をよく耳に挟むが、公立保育所の常勤職員として働く保育士ならば公務員にあたるはずで、決して「低賃金重労働」ではないのでは……? と疑問に思っていた。その答えも同書には詳しい。

 2010年の国勢調査によると保育士全体の約97%が女性で男性保育士はまだまだ少ないのだが、保育現場は「子育てしながら働き続けられる仕事」ではなく、そのため妊娠・出産で退職を余儀なくされる保育士が後を絶たないのだという。保育士資格を保有しているのに、結婚や出産で辞めてしまう“潜在保育士”が7割。同書に事例として掲載されている、パート保育士の女性は、公立保育所の正規保育士だったが、シフト勤務のため勤務時間が不規則で、「子供たちはおばあちゃんに預けっぱなし。保育士として、子供の食事の大切さや栄養のことも勉強しているのに、自分の子供にごはんをちゃんと作れないなんて……ほんとうに辛かった」と振り返っている。

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