子どもがほしいと思った百合カップルの妊活奮戦記『ゆりにん』が伝えたいこと

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 3.11から4年を過ぎ、日々恐怖の記憶も彼方へ……という人も相当数いると思います。しかし震災を機に結婚したり離婚をしたり、転職や引っ越しをしたりと、人生が変わった人も多いのでは? 実話を元にした創作の妊活マンガ『ゆりにん レズビアンカップル妊活奮闘記』(ぶんか社)の原作者・藤間紫苑さんも、震災がきっかけで23年の交際を経ての、妊活を始めたと語ります。

 百合・BL作家の藤間さんと、パートナーで会社員の牡丹さん。「ごく普通のふたりはごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました」と、往年のドラマのフレーズを引っ張り出したくなるほど、ふたりの妊活ライフは思いやりと愛に満ちています。

「でもただひとつ違っていたのは、ふたりはレズビアンだったことです」

 そう、ゆり=百合ということで、ふたりは同性カップル。この物語は男性から精子を提供してもらっての、レズビアンによる妊活物語なのです。同性カップルはもはや珍しくないけれど、子どもを作るとなるとなかなか大変なのでは? そこで藤間さんに、レズビアン妊活について語ってもらいました!

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 まずは周囲の反応はどんなものだったのか。藤間さんの場合は、「健康上の理由以外での反対はなかった」そうです。

「私にぜんそくの持病があるのと、リウマチの投薬治療をしていることから、家族からは身体が心配だからと反対されました。でも姉の夫が精子を提供してくれたりと、LGBT差別をしない家族や親戚に恵まれていたので、同性カップルだからという理由での反対はありませんでした。逆に言うと、反対するような人には言わなかったんです。おカタい人には『子どもができてから言えばいいや』と思ってました(笑)。でも牡丹の父親はつい最近まで、私たちのことをカップルではなく、『仲のよい友人同士』だと思っていたようです。なんとなく納得してもらいましたけど……(苦笑)」

 義兄から排卵日に精子を提供してもらい、精液を注射器で注入する方法(人工授精)で妊娠を目指した藤間さん。レズビアンカップルならではの壁についてたずねると、「誰に精子を提供してもらうか」ではないか、と教えてくれました。

妊活をしていて気づいたこと

「友人のゲイやヘテロの男性のなかには『自分の精子を使っていいよ』と言ってくれる方もいましたが、その方と将来、親権や財産を争うこともあるので、残念ながらお受けできませんでした。私の場合は義兄から精子を提供してもらったので、姉夫婦の姪と甥に「子どもができたら、あなたたちのきょうだいにもなるよ」と事前に言っておきました。子どもたちは家族が増えると喜んでくれましたが、他人の精子ではここまでスムーズにはいかないかもしれません」

 そして精神疾患を抱える人への差別意識があったことに気づいて驚愕するなど、藤間さんは妊活にまつわるあれこれを考えるなかで、今まで感じてこなかったことと向き合えたと語ります。

「私はぜんそくや解離性障害(自分が自分であるという感覚が失われている状態のこと。参照)の持病を持っていたので、子どもの頃から病気には理解があると思っていたんです。でも妊活中にパニック障害が起きた際に、『病気なのに子どもを産んでいいの?』と思ってしまって。精神疾患への差別意識が、自分にもあるのかもしれないことに気づきました。でも『病気にかかっていても、症状が落ち着いていれば大丈夫』と精神科の先生に言われたことで、病気があっても子どもを持ってもよいのではと思えるようになりました」

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