連載

安保法制と新国立競技場は「男のプライド」だけで動いてる

【この記事のキーワード】

「私の生活バランスを見直してくれるそこのあなた! 連絡待ってます!!」

婚活中の航空自衛隊員/『MAMOR』(2015年8月号)扶桑社

 自衛隊員を育成する防衛大学校では卒業とともに自衛官になることができるが、卒業時における任官辞退率は、2011年度が1.1%だったのにもかかわらず、2014年度には5.3%と増加、約5倍に跳ね上がっている(しんぶん赤旗)。現政権が自衛隊の活動範囲を拡張させようとしていることへの不安は、学生のみならず現役の自衛官にも広がっていることだろう。気持ちが揺れ動いている可能性など一切考えずに、保守オヤジ雑誌の常連寄稿者である立命館大学フェローの加地伸行は『WiLL』(2015年8月号)にて、「軍人(自衛隊は歴とした国軍である)は、その職務において一身を擲(なげう)つ覚悟を決めている」と勢い任せに書いている。

 防衛省が編集協力している防衛専門誌『MAMOR』には、自衛官が結婚相手を募集する連載企画「マモルの婚活」があり、このコーナーが好評を博し、2013年2月号では「自衛官と結婚しました!」という巻頭特集を組んでいる。そのなかの記事「自衛官の披露宴・面白エピソード」には、「新郎が最後のスピーチで、『私はこれからも日本を守ります!』と絶叫。すると会場から『妻も守れよ~!』とヤジが飛んで、会場がドッと湧きました」とある。最新号の8月号では1990年生まれの若き自衛官からの「私の生活バランスを見直してくれるそこのあなた! 連絡待ってます!!」との婚活アピールが掲載されているが、彼の頭の中には、男と女の役割が極めて古いかたちでインプットされているようだ。結婚した先輩があの調子なのだから、後輩がこの調子なのは仕方ない。でも、生活バランスくらい自分で見直したらどうか。

「男は、女の都合なんて考えないで、覆いかぶさってくるの」

林真理子/『週刊文春』(2015年7月9日号)文藝春秋

 「男のプライド」の更新作業を続けるオヤジ雑誌では、所々で、風呂場で背中を流し合うような光景が広がる。その風呂場に出入りできる女性がいるとすれば、それはやっぱり「男のプライド」を最終的に信じ抜く人たちだ。

 最近、「週刊文春」で『小林麻耶のいつまで独身?』なるコラムを連載し始めた小林麻耶と、同誌連載陣の古株である林真理子が、“ぶっちゃけ対談”をした。林は、小林に対して早々に「麻耶ちゃんは恋愛や男の人に幻想を持っているけど、それがそもそも間違ってる」と断じた上で、「男は、女の都合なんて考えないで、覆いかぶさってくるの」と続けた。小林が「お酒があまり飲めない」と申し出ているのに、林は「理性をちょっとはずすためにも、お酒が必要ね」と返すなど、最後まで噛み合わない。

 こちらは男で、女の都合を考えずに覆いかぶさったことはないのだが、実際に覆いかぶさるかどうかは重要ではなく、最後は男の都合に合わせるという考えこそ、この手の雑誌に歓待される。男が女の都合など考えないという生き物であると先読みするのが良い女、その上で男の都合に合わせていかないと、という趣旨である。女性がどう考えるかなんて最終的には無視して構わないと思っていることは、かつてこの雑誌が「安藤美姫選手の出産を支持しますか?」というアンケートを実施したことからも分かる。

「(笹崎里菜アナの)“あの精神力は並みじゃない”ともっぱらの評判」

『週刊ポスト』(2015年7月17・24日号)小学館

 日本テレビのアナウンサーに内定するも、学生時代にクラブ勤務していたことが発覚すると「アナウンサーに求められる清廉性にふさわしくない」と内定が取り消しされた笹崎里菜は、その後和解し、この春からアナウンサーとして入社した。新人アナウンサーは時期に多少のズレはあっても初年度から現場に引っ張り出されるものだが、彼女の場合、淡々と仕事をこなしただけでオヤジ週刊誌から「あの精神力は並みじゃない」と言われてしまうわけである。

 目立った女をどうにかして下げてみるこの手の論法は週刊誌の常套。目の前に頑張っている女性がいれば、「(女のくせに)あの精神力は並みじゃない」と、やたら特別な存在に仕立てる。他の女性とは異なるパワフルな女性だ、と位置づける。「輝く女性」という施策がキナ臭いのは、単にこの手の区分けをオフィシャル化しているに過ぎないように見えるからである。

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 安全保障法制についての細かな議論を読み比べながら、「暖簾に腕押し」という言葉が浮かんでしまう。どれだけ丁寧に議論しても、先方は、「オレがやるといったらやる」という構えを繰り返すだけなのだから。

 学生団体「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)」による安保反対運動が広がっている。その動きに触発され「安保関連法案に反対するママの会」も始動した。多くの若者、そして女性が声をあげている。デモに参加した女性が言う、「実行したいんなら私たちの疑問にきちっと答えてください」(『週刊金曜日』2015年7月3日)。まったくその通りだ。日本を取り戻すと言いながら「男のプライド」に酔いしれる人たちから、日本を取り戻さなければいけない。トイレを磨いている場合ではない。

■武田砂鉄(たけだ・さてつ)/1982年生まれ。ライター、編集。2014年秋、出版社勤務を経てフリーへ。「CINRA.NET」「cakes」「マイナビ」「Yahoo!ニュース個人」「SPA!」「beatleg」「TRASH-UP!!」で連載を持ち、「週刊金曜日」「AERA」「STRANGE DAYS」などの雑誌でも執筆中。近著に『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)がある。

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