「マイナンバー制度」施行で身バレと税金を恐れる風俗業界

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GrowAsPeople代表 角間惇一郎さん

GrowAsPeople代表 角間惇一郎さん

今年10月からマイナンバー(社会保障・税番号制度)が導入されることが決まりました。この制度は、国民一人一人に12桁の個人番号を付して、複数の行政機関に存在する個人情報を効率的に管理するために活用されるものとされています。

来年1月からは各種行政手続でマイナンバーの提出が義務付けられ、会社勤めをしている人や個人事業主は会社側や取引先にマイナンバーの提出をすることが求められてきます。企業や事業者側は、業務プロセスの作成や情報管理セキュリティーの徹底化が義務付けられており、現在対応に追われているようです。

国民全員に関係するマイナンバー制度ですが、夜の世界もまたその影響を受けるといわれています。そこで今回は、マイナンバー制度が夜の世界にどう影響を及ぼすのか、夜の世界で働く人たちはマイナンバー制度をどのように受け止めているのかを、風俗嬢を対象にした相談事業やセカンドキャリア支援を行っている一般社団法人GrowAsPeopleの角間惇一郎さんに伺いました。

不安の中身は身バレと税金

―― マイナンバー制度の施行が決まってから、夜の世界で働いている女の子(キャスト)が「所属しているお店が脱税で取り締まられるんじゃないか」「過去の無申告の収入から所得税が取られるのではないか」などを、インターネットで調べたり従業員に相談したりするようになったと聞きました。「バレないから大丈夫」ときちんと説明しないスタッフもいるそうで、不安を抱いているキャストもたくさんいるみたいです。角間さんもキャストから相談を受けることは増えたのでしょうか?

角間 最初に断っておきたいのが、マイナンバー制度が施行されたときに、実際に何がどう変わるのかは、まだ不透明な部分が大きいんです。ですから今日お話できるのは、現状として分かっていることだけです。

その上でご質問にお答えすると、しばらく連絡を取っていなかった現役キャストさんや元キャストさんから「(マイナンバー制度のことが)不安で夜も眠れません」といった相談がくるようになりました。従業員が具体的な回答をしてくれないから僕のところに来るというパターンは確かに多い。実はスタッフさんも不安を抱いているんです。スタッフさんも制度のことがよく分かっていない人は少なくない。夜の世界全体でマイナンバー制度に対する不安が高まっているといえます。

―― 業界全体が対応を迫られているんですね。どういった不安を抱いているのでしょうか?

角間 キャストさんやスタッフに「なにが不安なんですか?」と聞くと、「なんとなく」と答える人が多いんですよね。とても漠然とした不安を抱えているので、自分が一体なにをすればいいのかが分かっていないんです。ただ大まかに2つにわけられるように思います。ひとつが身バレ、もうひとつが税金です。とくに前者への不安が大きいみたいですね。

マイナンバー制度は国民全員にそれぞれ固有の12桁の数字が割り振られる制度です。この数字を使って、社会保障や税金に関する情報が管理される。だからキャストさんは「お店にマイナンバーを渡したら個人情報が全部バレちゃうんじゃないか」「お店で働いていることが家族や会社にバレるんじゃないか」などと不安になるわけです。でも、はっきり言ってその心配はありません。キャストさんは忘れがちですが、そもそも面接の時に免許証のコピーをお店にとられているんですよ。

―― すでに個人情報を手渡しているんですね。

角間 そうです。全国のお店を見ていると、キャストさんの個人情報がずさんに管理されていることがざらでした。ホワイトボードに免許書のコピーが貼ってあったり、個人情報が書かれた紙をそのへんに置いていたり。情報漏洩のルートはとてもシンプルです。個人情報が記載されているファイルを誰かが外部に持ち去る場合がほとんど。だから情報漏洩のリスクはもとからあったんですよ。

―― マイナンバー制度によって身バレのリスクが大きくなることはない。そもそもお店側はキャストさんのマイナンバーを聞いてくるのでしょうか?

角間 いま分かっている情報の限りだと絶対に聞いてきます。

マイナンバー制度が施行されると、税務署に提出する書類に、どのキャストさんに、どれだけのお金を払ったのかを、それぞれのマイナンバーと一緒に書かなくてはいけません。ということは、ちゃんとした風俗店――何を持って「ちゃんとした」と言えるのかはさておき――納税義務を果たしているお店はキャストにマイナンバーを知っておかなくてはいけない。そうしないと税務署に怪しまれてしまいます。

だから、むしろマイナンバーを聞いてこないお店のほうが怪しい。社会が足並みを揃えなければならない取り決めに対して、「自分たちは関係ない」と言い切っているわけですから。そういうお店の中には、脱税しているとか、ちゃんとした金銭管理をしていないとか、社会情勢に対して疎いとか、いろいろな懸念事項が出てくるわけです。管理意識が希薄なお店にいるよりは、マイナンバーを聞いてくるお店のほうが身バレのリスクは低いと思いますよ。

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