社会

「マイナンバー制度」施行で身バレと税金を恐れる風俗業界

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風俗嬢は個人事業主

―― もう一つの不安要素である税金についてお聞かせ下さい。

角間 大前提として納税は国民の義務です。これはマイナンバー制度が施行されようがされまいが変わりません。

キャストさんやスタッフから「口座にお金を入れなければいいんですか?」「現金でもらえばいいんですか」といった相談も受けます。でもそれは「脱税の方法」を聞いているんですよね。こういう相談にはお答えできません。税金から逃れるのではなく、ちゃんと納めたほうがいい。

―― そういう相談があるということは、現状ではキャストさんたちは納税していない?

角間 確定申告をしてないキャストさんが多いんですよね。

いろいろとややこしいのですが、お店はキャストさんに「給与」ではなく「請負による報酬(事業所得または雑所得)」という形で金銭を払っています。つまり風俗店はキャストさんと雇用関係を結んでいない。会社だったら所得税などを引いた上で社員に給料を支払うので、いちいち自分の所得を計算する必要はありません。でも雇用契約を結んでいない個人事業主であるキャストさんは、自分で所得を計算して、確定申告をしないといけないんです。その必要があることを知らないキャストさんが多いし、お店側も積極的には説明していないんですよね。

あるいは、お昼は会社で働いていて、風俗で副収入を手に入れているキャストさんだと、確定申告の必要性はわかっていても、会社や家族に風俗で働いていることがバレるんじゃないかと恐れるあまり、無申告のままという人もいます。ただ詳細は省略しますが、副収入もしかるべき方法で確定申告すれば会社にばれることはありません。

―― 今まで無申告のままでも大丈夫だったのはなぜですか?

角間 お店側が税務署に税務申告する際に「誰にいくら支払いましたよ」と書くのですが、この「誰に」の部分が適当でも問題なかったんです。キャストさんがどれだけの報酬を得ているのかは追いかけなかった。

もちろん税務署は、お店側が「誰に」どれだけの報酬を支払ったのか、そしてその報酬を受け取ったキャストさんがきちんと確定申告をしているかを調べる権限は持っています。でもそんなことやっていられない。日本の人工は約1億3000万人もいますからね。効率的に、多くの税金を徴収するには個人より法人を追いかけたほうがいい。だから誰にも支払っていないのに嘘の申告をしているお店に気付いたら、税務署はお店に対して追徴課税を課します。

マイナンバー制度の施行が確定申告を促す

―― つまりお店側は、税務署から睨まれている分、納税の意識を持てていたけれど、キャストさんは今すぐ不安を感じるような環境になかったということですね。過去に申告しなかった所得に対しての徴税はあるのでしょうか?

角間 現状では何とも言えないです。いまのところ過去の分についてのアナウンスがないので。

現状で出来ることは次の3月までに今年の確定申告をきちんとやることです。そうすれば、お店が税務署から調査されて、キャストさんも調査対象になったときに、「私はちゃんと確定申告をしています。税金を支払う意思がありますよ」という意思表示が出来ますから。

―― きちんと確定申告をして納税することで、身バレのリスクも減らせるという訳ですね。脱税の方法を考えるよりもよっぽど安心ですね。

角間 国民の義務だから税金を納めた方がいいというのももちろんですが、その他のメリットもあります。

夜の世界は社会から厳しい目で見られています。何かと叩かれてしまいますし、ネットで晒し者にしようとする人もいる。そんな時に「きちんと税金を払っているのに何が問題なんだ!」ということはできる。しかし現状では、そんな風に反論できるキャストさんは稀でしょう。そもそも夜の世界で働いているだけで厳しい目で見られること自体どうなんだと思いますが。

―― ほかにキャストさんへのアドバイスはありますか?

角間 確定申告だけじゃなくて、年金もきちんと払っておいた方がいいと思います。

年金って「歳をとってからお金がもらえる」ことばかり見がちですが、病気やケガによって、働くことや日常生活を送ることに支障をきたした場合に支給される「障害者年金」と、年金加入者が亡くなった際に遺族に支払われる「遺族年金」という要素もあります。

国民年金保険料額は年16,380円(平成27年度)です。高いですよね。でも夜の世界で働いているキャストさんが入れる保険はかなり限られています。性病にかかったり、ホテルに移動しているときに交通事故にあってしまった場合に、保障を受けられるケースが少ない。でも「障害者年金」と「遺族年金」は、毎月6万円以上が保証されているんです。毎月ですよ。十分な額ではないかもしれませんが、ゼロより全然マシです。だから年金を支払っておく意味がある。

―― 税金も年金も支払うことを嫌悪しがちになってしまいますが、自分の身を守るためにも役立つという訳ですね。

角間 夜の世界で働いていることを周りの人に堂々と話すことは難しいと思います。だから、なかなか相談ができない。漠然とした不安はあっても、それをどうすればいいのかわからないんです。でもその不安を因数分解すると、身バレと税金のふたつになるんですね。それらは今までお話したとおり、マイナンバー制度の施行でリスクが大幅に変わるわけではありません。自分が在籍しているお店が税務管理や情報管理をしっかりしているのかを知るきっかけになるし、将来のことを考えるいい機会にもなると思います。
(聞き手・構成/高平メグミ)

角間惇一郎(かくま・じゅんいちろう)
1983年新潟県生まれ。一般社団法人GrowAsPeople代表理事。夜の世界に関わる女性のセカンドキャリアに関わる課題をデザイン的に解決する試みを行っている。URL: http://growaspeople.org Twitter: @kakumaro

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