違法化するお店が増える?
―― 制度に対応出来ずに違法化するお店は増えるのでしょうか?
角間 人手が足りていない店や税理士を雇う財政的余裕がないお店だと、マイナンバー制度に対応できず、結果的に違法化してしまう可能性があります。
―― お店の規模や財務状況に左右されるということですね。
角間 そうですね。大きな風俗店グループじゃない限り、慢性的に人員不足ですし、店舗のスタッフが自分たちで税務管理をしているお店も多いです。たとえばデリバリーヘルスの場合は、24時間営業のお店も多いのでスタッフの労働負荷がとても高いんです。法律上24時間営業が許されているがゆえに、どのお店も24時間営業をする。他のお店にお客さんをとられたくないですからね。
しかもスタッフってあんまり稼げないんですよ。だから新しい人材がなかなか入ってこない。少人数でお店をまわしていかなくてはいけませんから、拘束時間は必然的に長くなる。その上、最近の風俗店スタッフにはコンピュータリテラシーも要求されます。スタッフレベルでも、サイトの更新や広告戦略の能力が必要になってくる。結構頭を使うんですね。新しくスタッフが入ってきたら、これらを一から教育しなくちゃいけない。またまた労働負荷が高くなります。しかも「稼げる!」と思って入ってきたスタッフだと、すぐ逃げちゃうので……。
―― スタッフの労働環境を整えて負荷を減らさないと、結果的に違法化するお店が増える恐れがある訳ですね。
角間 そう思います。そうならないためにも、スタッフの雇用環境の改善と税務システムや労務システムを整える必要性があると思います。
マイナンバー制度が社会と繋がるきっかけに
―― 制度の施行は夜の世界に影響を与えると同時に、今までも存在していた問題点を浮き彫りにしているのかもしれませんね。
角間 そうなんです。夜の世界にいる人たちにとってマイナンバー制度はネガティブなものとして受け取られがちですが、これはむしろこれまで存在していた課題を解決するためのきっかけにもなると思うし、彼ら彼女らにとって社会と繋がるいいきっかけになると思います。
前編でお話したように、マイナンバー制度によって、キャストさんが「自分は個人事業主で、確定申告をしなくてはいけない」と気付くきっかけにもなる。もしかしたら「そろそろ別のお店/仕事をしようかな」と真剣に考えるようになるかもしれません。それって閉じこもりがちな夜の世界で、社会に繋がる機会になり得るってことですよね。
また、お店側もマイナンバー制度に対応出来るようにスタッフの雇用環境を整えて、情報管理や税務管理の意識を高めるいい機会になると思います。キャストさんに対しても、マイナンバー制度や確定申告についての説明責任をきちんと果たせるようになるべきですし、そういうお店ならキャストさんも安心して働けるでしょう。
―― 業界全体で意識を変えていけたらいいですね。
角間 マイナンバー制度は、別に夜の世界を締め付けようとして決められたものではないと思います。新しいテクノロジーや法制度が、ターゲットにしていない別の業界の仕組みを意図せず大きく変えてしまったという話は割とあります。
いろいろと議論はありますが、マイナンバー制度自体は合理的なシステムだと思います。それにすでに施行は決められているのだから、自分たちでどうポジティブな変化に持っていけるかを考えることが重要なんだと思います。
(聞き手・構成/高平メグミ)
角間惇一郎(かくま・じゅんいちろう)
1983年新潟県生まれ。一般社団法人GrowAsPeople代表理事。夜の世界に関わる女性のセカンドキャリアに関わる課題をデザイン的に解決する試みを行っている。URL: http://growaspeople.org Twitter: @kakumaro
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