連載

「女性ならでは」の目線を乱発し、「女性なのに」と貶める政界とメディアの体たらく

【この記事のキーワード】

「『なんで』『どうして』『こうしたらいいのに』――。考えだしたら止まらない彼女たちは、ひた走りながら、味方を見つける。仲間に引き込む。この巻き込み力が起こす高次元の化学反応を私たちは、『おせっかい4.0』と名づけようと思う」

特集「イノベーション女子」・イントロ文/『Forbes JAPAN』(2015年9月号)プレジデント社

 各界で活躍する、斬新な商品やビジネスを編み出した女性、どうしてそれらは漏れなく「女性が」という枕詞から語られるのだろうか。佐藤がやったらなら佐藤の仕事、田中がやったなら田中の仕事ではないか。いつになったら「女性ならではの目線」ではなく、佐藤の目線、田中の目線として語られるのか。企業の経営層を中心に読まれている経済誌『Forbes JAPAN』が革新的なビジネスを興した女性たちを紹介する特集を組んでいるが、女性たちが成し遂げた成功例を並べて、それらが女性性に起因しているかのように紹介している。

 「おせっかい4.0」という謎めいた定義が象徴するように、男性読者が多いビジネス誌は時折、実績をあげた女性たちを「ひた走り」「引き込む」「巻き込み力」程度の才気に閉じ込めようとする。今回の特集では、例えば、ドローンによる宅配サービスを進展させ、高齢者への介護サービスに繋げようと模索する企業の女性社長が登場しており、それは時代の潮流をいくつも分析した上での新たなビジネスモデルに思える。これらが「考えだしたら止まらない彼女たち」で括られることに抵抗感はないのだろうか。

 中年向けの男性ライフスタイル誌では時折「秘書特集」が組まれる。そこでは必ず、「秘書の○○さんは仕事のサポートをしてくれるだけではなく、こちらが思いあぐねている案件にアドバイスをくれたりすることも。サポーターではなくパートナーですね」などと、雇う側から秘書のクリエティブな一面についての言質を引き出す。しかしながら、そこに載る写真は、先述の議員と同じように押し並べてスカート姿である。アイドル顔負けのルックスを誇る秘書が並ぶ特集は、掲載基準がどこにあるのかを教えてくれる。

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 女性週刊誌が今回の安保法制について疑問を投げかける記事を毎週のように掲載している。女子高生向けの雑誌「Seventeen」(集英社)までもが「教科書の中だけのできごとじゃないから、今、私たちが考える。17sで考えよう“戦後70年”」という特集を組んだ。それは彼女たちが「考え出したら止まらない」性別だからではなく、ただただ考えなければならないという切迫感を持ったことに起因している。

 付け焼き刃な法制に流されようとしている現在、これっておかしくないかと立ち止まっているのは女性たちである。毎日新聞の最新世論調査で、安倍内閣支持率は全体で32%と出たのに対し、女性のみでは26%と出ていることからも見え透ける。ヘイトスピーチの定義すらあいまいな論客が女性論客として蔓延っているのはまったく残念だが、居丈高な「論男」の軽薄さにさすがに気付き始めた今、女性の働きかけをいつものように「おせっかい」と規定している場合ではない。それは何よりも具体的な声ではないか。

■武田砂鉄(たけだ・さてつ)/1982年生まれ。ライター、編集。2014年秋、出版社勤務を経てフリーへ。「CINRA.NET」「cakes」「マイナビ」「Yahoo!ニュース個人」「SPA!」「beatleg」「TRASH-UP!!」で連載を持ち、「週刊金曜日」「AERA」「STRANGE DAYS」などの雑誌でも執筆中。近著に『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)がある。

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