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日本は発展途上国ではないか。「子どもを5,000円で育てられますか?」児童扶養手当増額キャンペーン

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真に成熟した国家となるための児童扶養手当

駒崎 続いて、作家であり、東京都教育委員会の委員でもある乙武洋匡さんお願いします。

乙武 本日はお忙しい中この問題に関心を持っていただきましてありがとうございます。世界第三位の経済大国である日本で貧困という問題が果たして本当にあるんだろうかと、おそらく国民の多くの皆さんが疑問を持たれるかと思います。ただこれまでのお話の通り、データを見ても貧困は確実に存在する。それによって苦しい思いをしているご家庭、お子さんがいることをこのキャンペーンを通じて広く伝えていきたいと思います。

赤石さん、渡辺さんがデータを用いてお話くださったので、私は主に現場の話を中心にしたいと思います。私は2007年4月から2010年3月まで杉並区立の公立小学校の教員として実際に担任を持っていました。公立小学校ですから、学力の開きというものがかなり大きく存在します。勉強のできる子、理解に時間のかかる子、そうした特徴を見ていくと、傾向として出てくるのは、家庭にある程度経済力のあるお子さんは比較的勉強がよくでき、ご家庭が経済的に苦しい状況にあるお子さんは、学力的にも苦しい状況になる、ということです。これは現場でも肌感覚で実感することですし、またデータでも最近、研究結果としてしっかりと出てきていることです。

勉強だけではありません。例えばサッカーの上手な小学生の男の子が2人いたとします。彼らが高学年にあがるにつれて、クラブチームに行きたいねという話をしだしたとしましょう。片方のお子さんはクラブチームに行かせてもらえる経済的な余力があり、もう片方のお子さんは、ひとり親でそういう余力がなかった場合、同じくらい上手で、同じくらい意欲があっても、方やクラブチームに通えて、方やクラブチームに通えない、そんな状況が出てきてしまいます。

私は、頑張った結果、開きが出てくる、そこが平等でなくなることに関しては、ある程度仕方ないことだと思います。結果にまで平等を求めると、様々なことが歪みだしてしまうと思っています。しかし、どれだけ頑張れるかというスタートラインにばらつきがある。これについては非常にもどかしい思いを現場で抱えていました。いくら教師が頑張っても、こればかりはなんともできないことでした。やはり頑張る環境、そのスタートラインは揃えてあげたい。そんな思いで子どもたちを見つめていました。

私自身は実現したい社会があります。どんな境遇に生まれてもチャンスが平等に与えられる社会です。私自身は身体障害者として生まれました。身体障害者だけでなく、世の中には様々な障害を持って生まれてきた人がいます。また今回のように、生まれた家が経済的に苦しい状況のお子さんもいます。それだけでなく、親が外国籍であったり、本人自身がLGBTであったり、生まれてくる境遇、環境は千差万別です。どんな境遇、どんな条件に生まれても、他者と同じだけのチャンスが与えられる。私はこれが本当の意味で豊かな社会だと思っています。そういった意味で、日本は本当に豊かな社会なのか。その観点で言えば、まだまだ発展途上国なのではないか。そんな風に思っています。真に成熟した社会になるために、ぜひこのキャンペーンを成功させたいと心から思っていますし、そのためにもぜひ皆さんにご協力いただきたいと思います。ありがとうございました。

少子化対策としての児童扶養手当

駒崎 次に、「婚活」という言葉を提唱され、少子化ジャーナリストとして活躍されている白河桃子さんにお願いいたします。

白河 皆さん、こんにちは。少子化ジャーナリストで、相模女子大客員教授の白河です。私は少子化大綱の委員などもやらせていただいておりますので、今日は少子化対策としてもひとり親支援はとても重要というお話をさせていただきます。

実はさっきまで、地域少子化対策検証プロジェクトという委員会で、どうしたら若い世代の方たちが希望のとおりに結婚したり出産していただけるのかという議論をしていたのです。ひとり親の方たちの幸せな姿というものがなければ、若い方たちにとって非常に結婚や出産は非常にハードルの高い、リスクの大きなものになってしまうんですね。私はずっと、ひとり親の幸せな姿こそが少子化対策と思っています。川崎市でお子さんが殺されてしまったシングルマザーは、5人の子どもを育てていました。朝から晩まで働いていて、子どもを看ていられなかったと泣き崩れていらっしゃいましたが、私が過去に取材に行ったことのあるフランスではこんなことありえません。なぜなら、フランスでは4人も子どもがいたら、親の手当てだけでも暮らしていけるのです。フランスには30種類もの家族手当があって、3人子どもがいるシングルマザーなら、さまざまな給付のトータルで15万円相当が支給されるそうです。

フランスで印象的だったのは、ひとり親の方たちの、希望を持った明るい姿でした。フランスは少子化対策に成功して、いま2.0以上の出生率を持っているモデルケースとされています。それは女性にとって、どんな形でお子さんを持っても安心ですよ、子育ては政府が支えますよ、という社会になったからこそではないかと思います。日本はいま、出生率1.8を目指すという話がでていますが、その際に必要なことは、どんな風に、どんな形でお子さんを持ったとしても安心・安全に暮らせる社会だと思います。だからこそひとり親家庭への手厚い支援が求められている。このキャンペーンの呼びかけ人として、いろいろな方に、社会の根底を支える意味でも、ひとり親への支援は大事なことなんだということを伝えられたらと思っています。

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