セックスはいつだって男のせい? 『先生の白い嘘』から考える「男女の支配」

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暴力に気がつかない女性と男性

 性的暴行や親密な関係における暴力を問題化する際、「男性による女性への加害」という構図を明確にすることがこれまで重視されていました。つまり、単なる「別れ話のもつれ」ではないか、あるいは女性側の「被害妄想」や「自意識過剰」ではないかとの疑惑が絶えずかけられる状況に反論し、性的暴行や親密な関係における暴力について考えるためには、男女の非対称性を前提とすべきとする主張がそこにはあります。

 実際、内閣府男女共同参画局による20 歳以上の男女5,000人を対象にした調査によれば、恋人から暴力行為を「受けたことがある」とする人は女性2割程度、男性1割程度で、女性の被害経験が多いことがわかっています(図1)。こうしたデータに基づき、適切な対策や事実の周知が必要なのはいうまでもないことです。

男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)より

男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)より

 反面、この数字をどう読むかはなかなか難しいところだなあと私は感じています。聞き取り調査などをした経験から考えれば、「1~2割程度の被害経験」という数字は低いような気がしてしまうからです。

 仮に、実際の被害経験とデータに齟齬があるとするならば、その理由は何なのでしょうか? テーマが重くて回答しにくい、調査対象となった人数が少ない、得ているデータに偏りがある、など、多くの可能性が考えられますが、ここではデートDVという言葉の認知について触れたいと思います。

男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)より

男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)より

男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)より

男女間における暴力に関する調査(平成26年度調査)より

 通常のDVが夫婦など安定的なカップルを想定しているのに対し、デートDVはティーンエイジャーをはじめとしたいわゆる「交際関係」での暴力を問題化した比較的新しい言葉です。先ほどの内閣府の調査ではデートDVの認知についても調べているのですが(図2)、男女や年齢で認知のされかたに違いがあることがわかっています。

 近年では教育などによる啓蒙の効果が出ているのか、20歳代女性では「言葉も内容も知っている」とする人が半数ほどいます。一方、他の年齢層では3割程度、20歳代男性では「言葉があることを知らなかった」という人が4割ほどになっています。

 自分が暴力を受けていると気付きながらも自身を「被害者」と位置付けることの困難について、『白い嘘』は美鈴や新妻の他にもさまざまな例を見せてくれています。私の知っている範囲でも、女性はもちろん男性においても、「たいしたことではない」として忘れたり、流したりすることで自分を守ろうとする事例が少なからず見られています。デートDVという概念自体を知らない人の多さは、暴力にさらされたという事実に気付くことができずにいる人が相当数いるということを示しているように思えます。

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