10代の交際にDVの芽が隠れている!? 女性弁護士と考える「暴力」と無縁の恋愛

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――身体的な暴力もさることながら、精神的な暴力も人の心身を苛みますね。

「はい、とても深刻です。日常的にチクチクいわれる嫌がらせが何年も継続したり、何カ月にもわたって無視されたり……。ところが裁判では、殴られたり蹴られたりは診断書や写真を提出すれば認定されやすいですが、精神的暴力は証明がむずかしいんです。精神的暴力の被害の深刻さは身体的暴力によるそれに比べて重視されていないと感じますねさらに性的暴力になると、私たち弁護士が信頼関係を築けたと実感していても、まだ打ち明けてくださらないことが多いです。『夫婦はセックスするのが当然、受け入れられない私がダメなんだ』と自分を責めたり、性について口にすること自体を恥ずかしいと思ったりする人が多く、表に出てきにくいのでしょう。被害者が恥を感じるなんて理不尽です。ただし、『夫婦はセックスするのが当然、多少イヤでも受け入れなさい』と思っている裁判官もいないとはいい切れず、性的な暴力も暴力として厳しく評価してくれるでしょう、と太鼓判を押すこともできないのが切ないところです。裁判官も思い込みがないとは言えないので

――うかがっていると、そもそもDVをする人との交際自体を避けたくなるのですが、そうした男性に共通の特徴はありますか?

「それがないんですよ。学歴や職業といったバックグラウンドに共通点はなく、たとえばDV被害者の味方であるはずの警察官や弁護士にもいますし、対外的には〈いい人〉に見える人も大勢います。強いていえば、他者、特に自分がほんとうに大切にすべき人を思いやれない、その人の痛みがわからないのが共通点です。成人して急にそうなったわけではなく、人格が形成される段階で人との接し方を学ぶ機会がなかったのでは……と私は考えています。10代のうちからデートDV、またはそれに近いことをしてきた可能性はあります。一目見て『この人はいかにもDVをふるいそう!』とわかるポイントはないと思ってください。DVは親密な関係のなかで生じますから、つき合ってみないと、もしくは結婚してみないとわからないケースが多いから厄介です」

束縛=恋愛ではないと気づいて

――10代は恋がキラキラして見える時期だけに、束縛=愛情と勘違いしやすいですね。本書では少女漫画や人気小説から、DVにつながりそうな恋愛行動の例を挙げています。〈壁ドン〉〈顎クイ〉なども、威圧的な行動として紹介されています。

「うっとりしているところに水を差したり、『男女で役割分担が決まっているのはおかしい、いつでも対等じゃなきゃ!』と〈お説教〉したりといったことは、少年少女を白けさせるのでは……と、このあたりの書き方はとても悩みました。でも、キラキラのなかに危険なサインが潜んでいることはありうる、と気づいてほしかったんです。そして、それを見つけたら自分が傷ついたり相手を傷つけたりする前に、できるだけ早い段階で対処すること。たとえば、ほかの男性と話しているのを見て彼がヤキモチを焼く。この程度なら女性も『大切にされている』と受け入れがちですが、そのうち『男の美容師の店にはもう行くな』『俺以外と外出するな』とどんどん制約が厳しくなり、自分の考えで行動すればキレられるのではと怯えて自由に行動できなくなる……これがDVのパターンです。早々にNOの意思を表示できればいいのですが、『私が我慢すれば』と自分を封じ込める女性も少なくありません。そうしているうちに、DVはますますエスカレートします」

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