「育児中の美容部員も土日勤務を」資生堂ショックの真意とは?

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資生堂の思惑がわからない

 今回の改革にあたっては「家族の協力が得られないかの聞き取り」や「協力者がいない場合のベビーシッターの補助」「地域の子育てサービス活用のアドバイス」などもしています

 企業ですから、基本的には利益を重視して運営を行います。その中で社員の働きやすさを考慮していくことになるでしょう。

 業績悪化の一因が時短勤務によるものなのだとして、制度をまるまるなくすのではなく、「聞き取りの上でのシフト調整」「ベビーシッターの補助といった選択肢の提示」などは、資生堂のできる最大限の考慮だったのかもしれません。

 人事部ビジネスパートナー室の本多由紀室長が「育児期の社員は常に支えられる側で、本人たちのキャリアアップも図れない。なんとか会社を支える側に回ってもらいたいという強い思いがあった。働くことに対する意識、ここに対してメスを入れていこう」「育児時間(短時間勤務)を取っている人は悪い評価でも文句を言えないから我慢してもらおうではなく、ちゃんとそこは客観的に評価をしていく。厳しい部分はあったかもしれないが、会社も社員もどちらも成長していく、意義のある大事な取り組み」と発言するように、会社として社員の育児出産に協力する一方で、社員としても他の社員と同様に戦力になってもらいたい、と要求するのは自然でしょう。

 一方で、執行役員の「甘えがでている」「権利だけ主張する」という発言が気にかかります。「育休中の美容部員は楽をしているんだ」という思い込みが、割を食っていると感じやすい同僚だけではなく、経営陣の中にもあるのだとしたら、制度を整える側の意識としては問題なのではないかとも感じます。

資生堂の改革は前進か、それとも後退か

 資生堂は人事関連データを公表しているので関連するデータをいくつか羅列してみましょう。すべて2014年度のデータで、カッコ内は前年度のデータとなります。また断りがない限り、国内資生堂グループ全体のデータです(国内資生堂グループの総社員数は2万3,870人)。

資生堂販売株式会社(美容職)の、結婚・出産・育児理由とした離職率
1.00%(0.80%)

育児休業
1,421人(1,507) 男性9人 女性1,412人

育児時間取得
1,882人(1,829) 男性7人 女性1,875人

短時間勤務制度利用者
1,898人(1843) 男性6人 女性1,892人

産休・育休後の復帰率(資生堂販売株式会社)
97.4%(96.9%)

産休・育休後の定着率(資生堂販売株式会社)
89.8%(94.4%)

 このデータを見る限りでは、出産・育児をする社員にとって非常に居心地のいい職場であることがわかります。なんせ結婚・出産・育児理由とした離職率がたったの1%なわけで99%が職場に復帰できているわけですから。

 来年度のデータがどのように表れるかにもよりますが、この数値を同程度の水準にキープしたままでいられたとしたら、資生堂の「時短勤務の美容部員がキャリアをアップできるように」という制度改革の意図は、建前ではなく本当のことと言えるのかもしれません。そうなれば、資生堂の育児支援制度は後退したのではなく、むしろ前進したと捉えることもできるでしょう。つまり制度が充実し、利用も可能になり、「当たり前」になったからこそ、次のステップに進むことが出来た、と。これは今後の動きに注目することで見えてくるものだと思います。

 一方で、業績悪化による制度改革なのであれば、なぜ育児支援制度がその煽りを受けなくてはいけないのか、「一番切りやすいところ」という意識があるのではないかとも思えてしまう。あるいは、女性が働き続けることに理解のある資生堂ですらそうせざるを得ない社会構造があるということでもあるでしょう。その場合、資生堂という単一の企業はなく、より大きな、国による支援の充実が必要だということがはっきり見えてくるのだと思います。
(門田ゲッツ)

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