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櫻井よしこ率いる武道館フェス、「日本らしい憲法を取り戻せ」「中国がヤバい」連呼で、極右オジ様が拍手喝采の不気味

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櫻井のスピーチにオジ様たちが引き締まる

 安倍首相は予算委員会出席のため、ビデオメッセージでの登場となったが、せっかくの身内だらけの機会、ここぞとばかりに憲法改正を目指すことを声高に訴えた。壇上には、文部科学大臣を退かされた下村博文、女性活躍担当相として女性問題に取り組むのかと思いきや「ジャパン・トイレ・チャレンジ」なる企画を思い立ち、「トイレは皆さんにとって必要なもの。“トイレ大臣”と呼ばれてもよい」(産経ニュース・2015年8月24日)と放言した有村治子、集団的自衛権行使を可能にする安保法案に際して「法的安定性は関係ない」というトンデモ発言を晒して政権の足を引っ張った礒崎陽輔の姿も見える。出席した国会議員の名前を一人ひとり読み上げる時間が設けられたが、名前が紹介される度に、武道館から割れんばかりの拍手が起きる。そのなかでも最も音量が大きかったのは三原じゅん子。すっかりオジ様たちのアイドルとなっているようだ。

 野太い声が響く「国歌斉唱」が終わると、主催者挨拶として櫻井よしこが登場する。会が終わった後で振り返れば、誰が登壇しようとも、そのスピーチは画一的。今の憲法はアメリカに押し付けられたものだから自分たちで作る、今は中国が軍事力を増強しているから現行憲法なんかじゃ対応できない、という二本立て。白のスーツを身にまとった櫻井が登壇すると、一言も聞き漏らしてはならぬとオジ様たちの気が集中、武道館の空気が引き締まるのがわかる。

 櫻井がこの大会の主旨を述べる。「私たちは憲法改正の機は熟しつつあると捉えています。憲法は国の基です」「現行の日本国憲法で、果たして日本国民と日本国を守り通すことができるのかと。答えは否でありましょう」。

 巻き起こる大きな拍手。現行の憲法前文はぐちゃぐちゃであり、聖徳太子の『十七条憲法』や、明治天皇の『五箇条の御誓文』など、先祖が大事にしてきた様々な価値観がまったく反映されていない、ないがしろにされている、とする彼女らの考え方は、やたらと戦前、そして明治時代に向かう。

ぶっちゃけトークに転がらない冷徹さ

 「アメリカに押し付けられた」を何とかの一つ覚えとする人たちは、この70年間、“私たちの愛する”日本が戦渦に巻き込まれることなく歩んできた史実を振り返らない。押し付けられた憲法が本望でないとするならば、いかに本望でないのかを細かに精査し、その上で自らの案が今まで保たれてきた平和を上回るほどのものであると提示するべきだが、とにもかくにも、「日本らしい憲法を。あと、中国がヤバい」との声が連呼される。「今日ここに集いました熱い心をさらなる力の源泉として、日本国憲法を本当の意味で日本国民の手に取り戻すために、全国津々浦々、日本を愛する皆の力を合わせて、一緒に改正を実現してまいりましょう」と締めくくる。

 櫻井よしこのスピーチは、とても巧い。元ニュースキャスターだということもあるけれど、人に聞かせる術を心得ている。権力オヤジのスピーチは「今日は機嫌がいいから、ざっくばらんに本音を話しちゃおうかなぁ」というぶっちゃけトークを得意とするが、櫻井の弁舌はそういった方向へ転がっていく可能性を一切持たない冷徹さに満ちていて、その態度が「もっともっと櫻井さんという人を大切にしなくては」と、オジ様たちのハートを射抜くのだろう。

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