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女性側の主張が全面的に認められたマタハラ訴訟 「自由な意思」に基づく意思決定が行える環境とは?

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「自由な意思」で意思決定できる環境とは?

 女性の訴えに対し広島高裁は、病院側に慰謝料など175万円の支払いを命じるなど、女性側の訴えを全面的に認める判決を下しています。

 複数の報道をみると、今回の判決は「自由な意志に基づく同意」も「特段の事情」もなかったとされています。というのも、高裁の野々上友之裁判長は、「女性は当時、副主任を解くと言われて不満だったが、妊娠中で精神的ストレスが続くことも不安だったのでしかたないという心情であり、心から納得して受け入れたとはいえない」「事前に理由などの説明がないなかで副主任を解かれ復帰後の地位についても不安を払拭(ふっしょく)する説明を受けられず、職業人としての誇りを傷つけられた」と延べ、また病院側の「女性の異動先には権限が重なる主任がすでにいて、指揮系統が混乱する可能性がある」との主張も「具体的な弊害が明らかでない」と退けているからです(「妊娠理由の降格 病院側に賠償命じる」、「妊娠で降格は違法、逆転勝訴 差し戻し審で賠償命令」)。

 ここで注目したいのは、「妊娠中で不安だったので仕方ないという心情であり、心から納得していたとはいえない」という点です。マタハラ.NETによれば、女性側は「一時的な降格は納得」していました。しかし高裁は、それすらも「納得させられていた」と考えている。その理由は、おそらく病院側が「副主任の降格と復帰後の地位について、事前に理由を説明しなかった」ためでしょう。その上で、病院側が主張する「特別な事情(指揮系統が混乱する)」も妥当性がないと考えたのだと思われます。

 今回の判決によって、今後は産休・育休をとる社員の労働条件や契約関係、地位の変更をする際には、納得的な「特段の事情」を示し、その上で「自由な意思で同意」してもらう必要性がでてくると思います。この「自由な意志」が肝で、はっきりと「自由な意志」に基づいていると言うためには、職場の環境を整理しなくてはいけないでしょう。「産休・育休をとったら他の誰かに迷惑をかけるから休めない」「過去に産休・育休をとった社員は、その後、降格して職場を辞めている」という労働環境での意思決定は到底「自由な意志」ではありません。

今回の判決は問題解決のきっかけになるか

 判決後、原告の女性は「訴えてきたことが認められとてもうれしく感動しています。今もなお妊娠・出産・育児をすることにより不当な扱いを受けつらい思いに耐えている女性が大勢います。その声を聞くたび自分の経験と重なり涙が出ます。子どもを産み育てながら働き続けたい。そのために事業主は男女雇用機会均等法を守ってほしい。そして社会全体で力を合わせてすべてのマタニティーハラスメントをなくすために必要なルールを作り上げてほしいと思っています」とコメントしています(「妊娠理由の降格 病院側に賠償命じる」)。

 また病院側は、上告するかどうか検討中とのことですが「最高裁が示した基準は重要な指針として配慮し病院運営にあたる」とコメントを出しており、対応を見直す可能性を示しています。

 2015年8月に日本労働組合総連合会が発表した「第3回マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」によれば、マタハラ被害者はおよそ3割。マタハラという言葉の認知が広がりつつある今だからこそ、少子化が問題になっている今だからこそ、この判決はマタハラ問題の解決に導く大きな一歩になるのではないでしょうか?
(門田ゲッツ)

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