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女性狙いを無視して大ウケした『半沢直樹』、ドラマ制作陣の誤解と固定観念

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 恋愛以外のジャンルでは、刑事モノや医療モノがシリーズ化して量産され、男女問わず固定ファンがきっちりついている印象だが、むしろ恋愛モノに関してはなかなかヒットに結びついていない現状があるということに、制作側は気付いていなかったのだろうか。

 ストーリーが複雑になりがちなミステリーやサスペンス、若く演技が稚拙な登場人物がどうしても多くなりがちな学園モノ……ジャンルに当てはめてしまうと、ヒット作品を作るのは確かに難しそうだ。しかし一昨年の『家政婦のミタ』(日本テレビ系)が大ヒットしたことを考えれば、視聴者が求めているものが、美しい女優でもラブシーンでもイケメンでも「号泣必死の感動モノ」でもなく、単純に「続きが気になるストーリー」か否かだけだ、ということが分かりそうなものである。その純粋に面白いストーリーや世界観を作ることは容易ではないだろう、だからこそ何かと役者の話題性に頼りがちになる。

 『半沢直樹』の制作チームは、実はそのことをよく理解していたはずだ。原作に、恋愛や家族愛といった余計な要素を盛り込まず、ストレートな勧善懲悪モノとして映像化することにこだわった。前出のインタビューで、監督は「悪役は悪役らしく、ヒーローはヒーローらしく、わかりやすく。日曜9時に『スカッ』としてほしい」と述べているが、まさに時代劇さながらのわかりやすさがヒットの要因だろう。

 かといって、すべての作品が時代劇を目指して単純化すれば、どの番組も視聴率が上がるかと言ったらそうではない。達者な役者を揃えればいいという問題でもない。似たような構造のドラマが乱立すれば、必ず視聴者は飽きる。かつては大いに盛り上がる題材だったせつないラブストーリーや三角関係も、今はありがちなものとして飽きられているのだ。

 『半沢直樹』の原作はまだ続いており、ドラマもおそらく続編が制作されるだろう。福澤監督自身、原作者の池井戸潤氏に、「(まだ書かれていない)半沢が頭取になるまで僕にやらせてください」とお願いした、と明かしている。だが数年後に制作されるであろう続編(ドラマか、あるいは映画化してしまう可能性もゼロではない)も必ず大ヒットするという保証はどこにもない。監督の追求する「面白さ」と、視聴者の興味が少しずつズレていってしまう可能性もある。多様性の時代に、需要と供給が見事一致していること自体が奇跡的なのかもしれない。

 しかしとりあえず、放送中のドラマ本編は、18日の放送休止を挟み、25日から第二部(東京編)が幕を開ける。終盤に向けてさらなる盛り上がりに期待したい。
(ヒポポ照子)

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