夫婦が別々の姓を名乗っても、家族の一体感は損なわれない【選択的夫婦別姓訴訟、判決直前!ミニ講座①】

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家族を結ぶのは、名前ではない。Photo by Jaap Joris from Flickr

 結婚をするとき男性は変わらず、女性だけが変わるもののなかに「」がある。ここで、「いやいや、男性が変わる場合もあるでしょ」とツッコみたくなった人は少なくないはず。だが、それ以前に〈夫婦は同じ姓である〉ということに疑問を持ったことがある人は、さらに多いのではないだろうか。ここで、身近な夫婦を思い浮かべてほしい。そのなかに妻の姓に変えた男性はどのくらいいるだろう?

「夫婦は同じ姓であると民法で決められているがために、不利益を被った」として、現在、5名の男女が国を相手どって訴訟を起こし、〈選択的夫婦別姓〉を求めている。

 必ず夫の姓にしなければならないわけでもないのに一体なぜ? 古くからの慣習だから、そのままでいいんじゃないの? という疑問に応えるべく、messy編集部を訪ねてくれたのは、同訴訟の弁護団事務局長を務める、打越さく良(うちこし・さくら)さん。これから社会に巣立ち、結婚も視野に入れている大学生男女3人を対象に、「なぜ私たちは夫婦別姓を選択できるようにしたいのか」を説くミニ講座が開かれた。

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選択的夫婦別姓訴訟弁護団事務局長の打越さく良さん

【参加者※参加者はいずれも仮名です
中友さん 女性/大学4年
「夫婦別姓訴訟のニュースは聞いたことあります。就職すると、結婚で姓が変わることによって面倒なことがあるんでしょうけど、いまはまだ想像できず……。自分のこととして考えたことはないです」

西村さん 女性/大学4年
「今年、両親が離婚しました。私は成人しているので姓は好きなほうを選べますが、初めて『自分の名前が変わる』ことについて考えました」

赤石さん 男性/大学3年生
「夫婦別姓のニュースを見て、なんでこんなに問題になっているのか不思議でした。別姓にしたい人は別姓、同姓にしたい人は同姓、って誰も困らないように見えるのですが」

*   *   *

打越さく良さん(以下、打)「みなさん、結婚するカップルのうちどのくらいが夫の姓になるかご存知ですか? 2014年に結婚したカップルでは、96.1%が夫の姓を選んでいます(厚生労働省人口動態統計)。夫婦が同じ姓でなければならない、というのは、民法750条によって『夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する』と定められているからです。つまり妻側の姓を名乗ってもいいはずなのに、圧倒的多数が夫の姓を選ぶのはなぜか? そうするのが常識、と思われているからですが、それによっていろいろと不利益を被っている人たちがいます」

中友さん(以下、中)「パスポートや保険証などの手続きを変える手続きが煩雑なのは想像ができますが、ほかにはどんな不利益があるんですか?」

「いまは結婚しても職場などでそのまま旧姓を名乗りつづける方も多いですが、これを〈通称使用〉といいます。旧姓ではなく新姓で仕事をすると過去の自分の業績と分断されることもありますし、職場によっては通称使用を認めないこともあります」

西村さん(以下、西)「バイト先で、みんなからは旧姓で呼ばれているのに、経理などの都合上、名札は新姓……という社員さんがいて混乱しました」

「通称で通したいけど、『みんなに迷惑がかかるから』と新姓にする人もいますね。資格として通称使用を認めないケースもあり、私たち弁護士や行政書士、国家公務員は通称で活動できますが、医師や保健師はそれが認められていません。だったら公的な書類などでも通称を認めれば、別姓にする必要はないのでは? という声もありますが、戸籍にだけ残っていて、ふだんまったく使わない姓にこだわる必要ってあるんでしょうか? そして何より、心の問題があります。名前はその人を形成する重要な要素。これまで一緒に生きてきた名を失うことで、心を病み、人生をうまく生きられなくなる人もいます」

赤石さん(以下、赤)「いままで築いてきたアイデンティティが崩れてしまうのですね」

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