女友達は「なんでも言う」
濱 先ほどの吉田さんの、彼の「好き」に呼応する形での「好き」という言葉の中には、ベースとして吉田さん自身が彼を「好き」っていう感情が含まれてるんですよね? これが一切ないときでも、同じように「好き」と言えるものなんですか?
吉 うーん、なくても言えちゃいますね。私は本当に、仕事ばっかりしてしまう時期が結構長いので、「恋愛!」「しーーーごーーーとーーー」「恋愛!」「しーーごーーとーー」みたいな。仕事の波の方が長い。だから、仕事モードに入っている時には、恋人のことは頭に入ってきづらい。でもまあ、いずれまた恋愛の波がやってくるわけで、その時の自分のために「好き」と言っておく時期は確かにありますね。
濱 まあまあ、それは言っておかんと……ってやつですね。
田 なんか、型にはめるわけじゃないけど、この4人の中で、吉田さんって芙美っぽくないですか?
濱 吉田さんは、この中の誰かに共感することはあるんですか?
吉 まったく共感はなかったですよ。
濱 そうか、「言わなきゃ相手に伝わらんやろ」って思ってるくらいだしなあ。
吉 見てて一番気持ちよかったのは、あかりですね。なんか、仕事ばっかりしてて、ストレスもすっごくあって。この人が一番、“個”としての“あかり”じゃなくて、“性”の部分を、女としての私を見て! みたいな要素があって、見てて気持ちよかった。
濱 なるほど。田中さんは、何で吉田さんが芙美に似てるって思ったんですか?
田 芙美は「仕事とプライベートを混同したくない」ってセリフで言ってたから。旦那の仕事してる姿とかを、あんまり見たくない女性なんでしょ? ストーリーの中では、旦那の仕事を手伝わなきゃいけなくなる展開で、それでやきもきしてたりもするんだけど。
林 芙美は仕事中の旦那を見たくないわけじゃないと思います。でも、あの時の芙美の言っていることは私すごいよくわかります。男性は、夫やから恋人やからってことで、仕事……いわゆる公私で言ったら“公”の方にまで、女性に求めてくるような……実体験として私も今までに何度かそう感じることがあったので。私にだって“公”の顔があるねん、あんたのためにそこで何度も融通通すわけにはいかないんだと。でも、あれは仕事をしている拓也の顔を見たくないっていうわけではないと思う。
濱 じゃあ、林さんは誰に共感しましたか?
林 共感できる部分があったのは、芙美と純ですね。芙美の、“公”の顔をそれなりにちゃんと、仕事をしている人として保ちたいっていうところとか、わりと冷静に友達を見ているところとか。一方で、私、女友達に何も言わずに行動することが多いので……純は、彼女たちに何も言わずにいなくなっちゃうじゃないですか。
吉 ああ~…私、それ映画観てて、めっちゃ腹立ったんですよね(笑)。
濱 なんで友達なのに言わへんねん、ってことか。
林 私は離婚裁判とか失踪とかに展開しちゃった純のように大変な事態になったことはないけど、仕事を辞めるとか、彼氏と別れたとか、引っ越すとか、そういうことを女友達に言わないんですよね。言わずに思いつきで行動します。だから、すごく純の気持ちはよくわかります。やっぱり後から友達には、「何で相談してくれなかったの?」と言われるんですよ。「『相談してくれへんから、私、友達って思われてへんのかもしれん』ってあの子が悩んでたよ」って、別の友達から聞くこともあって驚いたりします。
吉 なんか、「女の子は大事な友達に何でも言うもの」っていうふうに思っている部分がある。
濱 一般的には、自分のことだからわざわざ他人に言わなくていい、っていう考えは普通にありますよね。「言わなかった」ことに対して女性が怒ることが、僕は理解が及ばないんですよ。逆に何でにそんな知りたかった? みたいな。
吉 何で知りたいんかなあ……。でも、友達って思われてないのかな……って思うのでしょうね。
林 友達と思ってたのに……ってことか。
濱 男性も同じだと思うんですけど。やっぱり何かしら秘密を分け合うっていうんですかね。
林 確かにそうかもしれない。女子同士の友情関係はわりと恋人に近いような。そんな感じはしますね。何かを共有しているとか。
田 女の友情っていうのは独特な関係性として、男女関係とは違う次元で確実に存在するんでしょう。この映画の中でも、純を離そうとしない旦那に、女友達という立場の芙美が「私たちのところに純を返して下さい」っていうセリフがあって、あ、このセリフはちょっと新しい!って思った。だって、すごいじゃないですか。旦那に対して「返してほしい」っていうセリフ。
吉 でも、いるんですよ。この人がいないと、グループの関係性が壊れるっていう、キーマンのような人。純が抜けた3人だけじゃ、やっていけないっていうのがあるんじゃないですかね。
林 4人がちょっとギスギスしそうなところで、空気を変えてくれる存在が純だったんだと思うんです。それが無いとしんどいよね。多分。
吉 純がいないと彼女たち友達いなくなっちゃいますもんね。純もいなくなって、3人も解散しちゃってってなると、自分の思いの丈を話す人がいなくなってしまって、そうすると、旦那とかと向き合っていくしかないんですもんね。
林 やっぱり、恋人といて楽しいのと、女の子の友達といて楽しいのは違いますよね。
吉 いやあ、全然違いますよね。
「泣く」ことの普通じゃなさ
田 じゃあ、「一般的な女性とは」っていうことではなくて、吉田さんと林さんに聞きたいんですけど、究極、男と精神的に繋がってなくてもいいって思ってますか?
吉 いや、思ってないです。
林 精神的なつながり……?
田 これは、中村うさぎさんの話なんですけど、あの人は、男と精神的に繋がることは無理だって思って、ゲイと結婚したんですよ。ゲイとは肉体的に関係はないわけですよね。でも、精神的にはつながれる。中身が女だから。で、中村さんは外でホスト遊びをするわけなんですよ。割り切って。中村さん的には、今の自分にとってはそれがギリギリ女である自分をつなぎとめられる関係性だったらしくて、それがベストなんだと。
吉 私は、私のことを一番知っているのは、恋人であってほしいって思ってます。十何年一緒にいる女友達じゃなくて、今一緒にいる恋人に知っていてほしい。でも、最初からずっと言っているように、ちゃんと説明しないと分からないものじゃないですか、男性って。だから、自分のことを知ってもらうためには、とにかく自分が球を打ち続けないといけないと思って。女性は黙っていないで、打ち続けるように在り方を変えていかないと。ちゃんと理解してほしいし、ちゃんと理解するし、私のことを支えてくれ……!って思います。
松 岡ひろみ(エースをねらえ!)のように打ってるわけですね! これは、受け止める方も大変やなあ。
吉 打つっていっても、攻撃じゃないんですよ、別に。私はこう思っている! と伝えること。
林 攻撃じゃないとしても、受ける方は、吉田さんの思いがいっぱいになってくるわけですよね。持ちきれないんじゃないか。
濱 「私はこう思っている」って伝えることが、攻撃じゃないのは分かるんですよ。でも、向き合って返すのは、それだけで結構な労力じゃないですか?
吉 え、じゃあ、もう付き合ってなくていいじゃないですか。
一同 いやいや!
林 私は、恋人に理解されたいとか、私のことをよく知ってほしいとかはあんまり思ってない。自分にとっての恋人は、姿がかっこよかろうが不細工だろうが、その存在が可愛いわけですよ。何してても可愛い。あ、コーヒー飲んでる可愛い! あ、寝言言ってるか~わい、みたいなそんなレベルなんですよ。で、自分もそういう感じで見られたい。可愛がりたいし、可愛がられたい。それと、さっき言っていた私自身の「外に向けてる顔」が、常に一定の顔でありたいので、私は友達の前でも泣かないし、人前で泣いたり取り乱したりしないし、したくないんですよ。その代わり、すごく感情を出せる場になってほしい、恋人の前という場所は。だから、私は球は打ってないかもな……。