社会

事故扱いされる議員の「育休」。議員はスペシャルでなければならないのか? 怒れる女子会@越谷

【この記事のキーワード】

三浦 今回の代表者会議を傍聴し、その様子を劇にされた内藤さんはいかがお考えですか?

内藤 私は元々、地方議会での問題発言だったり号泣してしまう議員だったりを見ていて(政治への)嫌悪感を持っていたんですね。でも実際に議員さんと話をしたら、理念を持って頑張っている人もいた。市民も政治にかかわって応援すべきだと感じていたところ、代表者会議で山田さんが召集されることを知ったんです。

代表者会議では召集した側の各会派のトップが、山田さんの意見を理解しようとする態度がまったくなくてびっくりしました。「女子供はすっこんでろ」「女は育児していればいいんだよ」と、別の言い方でしているように感じました。「育児も大事だからねえ~」って。鳥肌が立ちました。この様子をみんなが見たらどうなんだろうと思って、劇にしたんですね。実際キャラ立ちする人がたくさんいるんです。悪代官みたいな人もいて(笑)。山田議員には「わかってもらいたい」という気持ちはあるのに、相手は「言うことを聞け」という感じで、コミュニケーションが成り立っていないと感じました。

山田 問題にされたのはあちら側で、私としては問題とされるようなことを起こした認識はないんですよね。代表者会議は各会派のトップが話し合うものなので、私のことが問題になっても、私自身が呼ばれることは本来ありません。しかしあの時は、「ぜひ本人に説明をして欲しい」ということだったので言ったんです。しかし3時間以上かけてすれ違い続けた上に、最後に「これだけの時間を各会派の代表者に費やしたことに謝罪はないのか」と言われたんです。

内藤 男性の声が大きいということだけでなく、人の話を聞かない、パワハラのようなものがありましたね。傍聴しているだけでもドキドキするくらいですから、ご本人は相当つらかったと思います。その中で謝罪をしなかった山田議員はすごいと思いました。あの時に謝罪や訂正をしたら、山田議員が間違ったことをしたことだけが残ってしまいますよね。

松田 内藤さんの演劇は、山田議員の目線だけで書かれているわけじゃないんです。どの会派の人が見に行ってもよくできていると思います。悪代官みたいな人にも個人的な事情を抱えているシーンがあって、「事故」という文言で議会を欠席しているんですね。この人もいろいろなことを認めれば、議会がもっとやわらかくなるんじゃないか、そんな問題提起をされているんだと思いました。

内藤 オープンに出来るものはオープンにして話し合えば、分かり合えると思ったんです。自分自身を苦しめている方もいるんじゃないかって。

三浦 今のお話は「暴力の連鎖」を思い出します。暴力を受けた側が加害者になってしまうというのはよくある話なんですね。理不尽な「事故」という理由でしか休めないことにずっと耐え忍んできた人が、今度は他人にそれを押し付けてしまう。ここで一人の人間に立ち返って、自分でそのツラさを認めることが出来れば、同じようなツラさを感じている人と心を通じ合わせることが出来るかもしれない。それなのに、男女の壁、会派の壁など、たくさんの壁があるせいで、コミュニケーションが出来ていない。問題の根深さがありますよね。

山田 女性議員の中でも同意してくれない方はいらっしゃいました。

三浦 政治学には「男性優位構造」という考え方があります。ほとんどの国で男性が優位になって支配しているという構造が出来上がってしまっています。そこに女性が入っていこうとすると、男性化するか、女性に割り当てられた「可愛い子ちゃん」に甘んじるしかない。山田議員はこの壁にぶつかったんだと思います。マイノリティであるが故に注目を浴びるということもありますから、連携できないこともあるんですね。しかし個人の問題に還元することなく、構造の問題であることがわかれば、「この構造はいいものなのか、悪いものならば変えなければいけない」という連携がとれるようになる。その認識を深めることが必要でしょうね。

怒っている時は怒っていい

山田 FBに「若い世代が言わなければオッサンは気がつかない」と書いたことがありました。今回の記事とは別の記事だったのですが、議題としてあがったときに、この「オッサン」という言葉も「議員として著しく品格を傷つける発言だ」と言われてしまいました。「オッサン」という言葉が万人にとって良かったのかは考えなくてはいけないと思っていますが、ここまで「オッサン」という言葉に反応されるとは思っていなかったんです。特定の誰かを指す言葉ではなく、多様性を認めないで自分が正しいと思ってしまう人を「オッサン」だといっていたつもりだったのですが、それをキャッチするということは、多くの人が「オッサン」について考えていたのかもしれない。大きな発見でした。

三浦 谷口真由美さんが「全日本おばちゃん党」を立ち上げた際に、関西では「おばちゃん」はいろいろなことを気にかけるいい意味で使われていて、それに対して「オッサン」は、人の意見を聞かない独善的な人という意味で使っていたんですね。「おばちゃん」と同じような感覚の人は「おっちゃん」だ、ともおっしゃっていました。谷口さんとは東京で一緒に講演などもしているのですが、東京圏ではなかなかこのニュアンスの違いが浸透していないので、別の言葉はないかしらって話をします。私たちが政治の場にいてほしくないのは「オッサン」であって「おっちゃん」は大歓迎です(笑)。そういえば山田さんは「怒れる」という言葉にも言いたいことがあるんですよね?

山田 「怒れる女子会@越谷」を開こうと思ったときに、「もっと柔らかい言い方のほうがいいんじゃないの」「あなたのために波風をたてるようなことはしないほうがいいわよ」って人がいたんですね。でもどうして「おかしい」と思うことに「怒れる」って言っちゃいけないんでしょう。

12月1日に東京で開かれた「怒れる大女子会」での雨宮処凛さんでおっしゃっていたことがしっくりきたんですね。怒りは女性は女性に禁じられた感情なんだ、と上野千鶴子さんが言っていたそうです。怒ること女性としてはしたないことだと小さい頃から言われてきました。そのせいで大人になる中で、怒りを上手に表現できない人になってしまった、と。私も怒ることはよくないと思って育ってきて、怒りを表現できないことがありました。十代のときに自傷行為をやめられないことがあったのですが、あれは怒りを上手に表現できなかったからなのだと思います。男女問わず、怒りを表現できないが故の生きづらさがあるのではないでしょうか。

怒りってネガティブな感情ではなくて、行動の原動力だと思うんです。今回「怒れる女子会にしたい」と最後まで主張したのは、怒っているときには怒っていると言って、具体的な行動に移していかないといけないと思ったからなんです。上手に怒る技術を身に付け、具体的な政策や活動につなげたい。だから「怒れる女子会」というネーミングにしたんですね。

三浦 「怒れる女子会」というのは、全国で憲法カフェをされている弁護士の太田啓子さんが広めたんですね。憲法カフェで、放射能や安全保障について関心はあるのに意見を求めるとシーンとしてしまう女性たちに、「ちょっと自己紹介してみようか」と声をかけたら、とうとうと考えていることを語りだす様子を見て、「怒れる女子会」を作ろうと思ったそうです。みんな実は「ちょっといまの政治はおかしいんじゃないの」って思っているんだって。「怒れる女子会」に対しては「怖い」「自分が怒られるんじゃないか」って印象を受ける人もいる一方で、「こういうのを欲していた」って人もいて、全国で広まっています。

ところで、「怒り」ってどういう時に感じますか?

松田 妊婦になってからあまり怒らなくなったのですが(笑)、自分が大切にしているものを横取りされたり権利を侵害されたときでしょうか。あとはプライドを傷つけられたとき。

三浦 おっしゃる通りで、怒りというのは、自分の尊厳が傷つけられたときに出てくるものだと思うんですね。あるいは虐待のように、他人が踏みにじられているときに覚えるものだと思います。それは私たちが理不尽ではない社会を求めていることなのだと思います。正義とか公平さなどがまかり通る社会であって欲しい。だから怒りは正当だし、社会をよくする原動力なんだと思います。でも日本では怒ることがよしとされてはいない。「怒り」が押さえられて、力を持っている人たちの声だけが通るような社会は、民主主義とはほど遠い世界になってしまうと思います。

内藤 しかし怒りとして主張するのと同時に、相手を理解しようという気持ちも失われると断絶してしまうと思うんですね。山田議員は代表者会議で「皆さんのお話を伺えてよかった」とおっしゃっていました。怒りをエネルギーにしながら、互いの立場を理解しようとすることが大事なんだと思います。

三浦 亡くなられたある女性議員に、どうやって国政を動かしてきたのかを聞いたとき、男性は面子にこだわるとおっしゃっていました。正面突破でやってもうまくいかないことがあるから、「先生!」ってぺこぺこすることも時には大切なんだ、と。有権者のためになると思う政策や予算を勝ち取りたいわけですから、そのくらいのことはなんでもない。怒りも必要ですし、議会を動かすために戦略を磨かれるのも大事なんでしょうね。

山田 そこは私が今後スキルアップしていくしかないですよね(笑)。ただいまの段階では、新人議員として見えたことに嘘はつけないし、正面突破と言われようが、自分にしか出来ないことをやりたいです。気をつけていないと、どんなに市民に寄り添っていた方でも、慣習に慣れてしまうことがあると思うんですね。市民に最も近い新人議員だからこそいましか出来ないこともあると思います。

三浦 みんながもみ手でやっていくのも違うでしょうね。フレッシュな突破力を持った若い議員と、老獪な形で議論をまとめる人の両方が必要なんだと思います。

1 2 3 4

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。