社会

AV撮影自粛要望 多機能トイレ利用者は車椅子ユーザーだけじゃない

【この記事のキーワード】

 障害は外見から判断できるものに限りません。あるいは内臓疾患などの難病を抱える人も、なんらかのハンデを持っていることが外見だけではなかなか伝わりません。

 以前、ある障害を持つ知人からこんな話を聞きました。彼は足に障害を持ち、洋式トイレしか使うことができないのですが、仕事で訪れた施設ではトイレが全て和式で、多機能トイレのみ洋式だったそうです。多機能トイレを利用しようとするわけですがトイレにカギがかかっていて開かない。よく見るとドアの横にインターフォンが設置されており、「使用の際には管理室を呼び出してください」と書かれています。どうやら目的外の使用を防ぐためにインターフォンを設置しているようです。その時点で彼は、いちいちインターフォンの先にいる見知らぬ人間に自分の障害を伝えたくなかったし、どうして用を足したいだけなのに、弁解するかのように障害を伝えなくてはいけないんだ、とインターフォンを押すことを躊躇したそうです。とはいえ背に腹は変えられません。覚悟を決めてインターフォンを押すと、案の定「このトイレは車椅子に乗っている方などのトイレですよ」と言われたそうです。丁寧に説明するとカギを開けてくれたそうですが、モヤモヤしたままトイレを済ませたと言っていました。

 熊篠さんの言う「どうしても消化しきれない気持ち」もよくわかるのですが、よくわかるが故に、知人のように「一見すると障害者でないが、多機能トイレを使用したい人」が、多機能トイレの使用を躊躇してしまうようになるのではないでしょうか? 元はと言えば、インターフォンをつけるきっかけとなったであろう、目的外の利用が問題なのですが……。

多機能トイレの需要は高まる

 今後、マナー向上のための啓蒙活動はもちろんのことですが、多機能トイレそのものの数を増やしていくことが必要になるでしょう。現状では施設などのワンフロアにひとつ多機能トイレがあればマシなほうで、例えば5階建ての施設の1階にしかないとか、あるいはひとつも設置されていない施設もあります。多機能トイレを必要とする人が複数名訪れたとき、どのように対応するのでしょうか。

 同時にトイレ環境の向上も必須でしょう。必要としていない人が多機能トイレを使用する理由に「普通のトイレよりも清潔」であることがあげられます。だとしたら、普通のトイレが清潔になればいい。多機能トイレをあえて使う理由はなくなるでしょう。また、前出の「多機能トイレへの利用集中の実態把握と今後の方向性について」によれば、多機能トイレで待たされた車椅子使用者のうち、約83%が子ども連れの利用者が出てくることを経験しているそうです。トイレの世話やおむつの取替え、ベビーカーを伴って入室したいなどの理由だと思いますが、普通のトイレがもう少し余裕のある空間になれば、こちらも多機能トイレを使用する理由はなくなります。また先ほど例に挙げた知人や、「洋式トイレでないと踏ん張れない人」は、設置されているトイレが洋式になっていれば多機能トイレを使う理由はなくなります。

 高齢化が進む中で、車椅子人口は今後増えていくのではないでしょうか。すると必然的に多機能トイレのような、スペースのあるトイレの需要が高まるはずです。「女性活躍」の文脈で持ち出されたこともあり、「そんなことよりもするべきことはあるだろう」という冷ややかな目線がほとんどだった「日本トイレ大賞」ですが、私は発表当初からひそかな期待をしていました。これが「女性のため」だけでなく、「すべてのひとのため」のトイレ環境改善の動きに繋がるならば大歓迎だったからです。結局、どうやら内閣改造のあおりを受けてうやむやになってしまったように見えますが、2020年に開催される東京五輪に向けて、ユニバーサルなトイレの議論を再び活性化できないものでしょうか。
(水谷ヨウ)

1 2

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。