社会

再犯率は高くない性犯罪…加害抑止策の可能性を探る

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性犯罪の再犯率は高くない

 ここからは本題となる「性犯罪の加害」について述べていきます。

 たびたび「性犯罪は再犯率が高い」と言われます。そして「性犯罪者は社会復帰後に監視すべき」という主張がでてきます。

 しかし実際に、性犯罪者は再犯率が高いのでしょうか?

 なおマスメディアでの報道でも時折混合されているのですが、「再犯者率」と「再犯率」は異なる概念です。「再犯者率」は、検挙・処分された犯罪者のうち、再犯者が占める割合であり、「再犯率」は、過去に処分された犯罪者で、一定期間以内に再犯した人の割合を指します。つまり「性犯罪者の再犯率が高い」とは「過去に性犯罪を犯した人間は、再び性犯罪を犯す可能性が高い」ということです。しかし犯罪白書はもともと「再犯率」を記載していません。あるのは、「再犯者率」のみです。

 なお「日本刑事政策研究会」が刊行している「犯罪白書」によれば、同種再犯率(過去に処分された犯罪と同様の罪を犯した場合)は、高い順に、覚せい剤取締法違反者が29.1%、窃盗が28.9%、傷害・暴行が21.1%で、強姦は2%、強制わいせつは6.5%となっています。性犯罪の再犯率は高くはないようです。「性犯罪の再犯率が高い」という言説は、そのほとんどが思い込みなのではないでしょうか。

 であるならば「(同種再犯率を根拠とした)性犯罪者の監視」という主張は誤っている。感情的にはわからなくない議論です。どんなに「実際は違う」といわれても、恐怖心を抱いてしまうものでしょう。しかし根拠のない思い込みで刑を終えた人間の人権を侵害してはいけません。それでも「監視すべき」と考えるならば、整合性の高い、別の論理で主張するべきでしょう。

早期対応が肝

 「再犯率」も定かでなく(あるいは低く)、そして「監視」が無理なら、加害の抑止にはどうすればいいのか。ひとつは厳罰化が考えられます。厳罰化に対しては、筆者は効果を疑っているのですが、方法論としては選択肢のひとつとして数えられると思います。

 他に性犯罪者の「矯正」という手段が考えられます。例えば「平成27年版犯罪白書」の第三章「再犯防止に向けた各種施策等」では、「性犯罪再犯防止指導」が紹介されています。この指導では、冒頭で紹介した北原窓香さんの記事でも紹介されている「認知行動療法」が行われているようです。これは自身の歪んだ認知を自覚し矯正することで、再発を防止するスキルを身につけられるような指導を行う、というものです。

 このプログラムの効果はどれほどのものなのか。施設を出所した性犯罪受刑者2147人を追跡調査した「刑事施設における性犯罪者処遇プログラム受講者の再犯等に関する分析」によれば、プログラムの受講者と非受講者を比べると、「全ての再犯(性犯罪に限定しない)」において推定される再犯率は、前者が21.9%、後者が29.6%と、明らかな差があります。ただし「性犯罪再犯」に限定すると統計上意味のある差は見られません。

 より効果的な指導・支援が必要とされているようです。新しいプログラムの導入や、現在行われているプログラムの発展には、どんな可能性があるのか。そのヒントが「平成27年版犯罪白書」の第四章「特別調査」にありました。

 特別調査の対象者(平成20年7月1日から21年6月30日までの間に、裁判が確定した者1791人)をみると、性犯罪時の年齢は29歳以下が約5割、複数回性犯罪の前科がある者では約7割にも及ぶようです。若年層が再犯の連鎖に陥っている現状があるのであれば、若年層への指導を充実させれば再犯率を下げられるでしょう

 また、痴漢行為で実刑に処された者の6割近くが、過去に痴漢行為で罰金または執行猶予の処罰を複数回行っていたことも明らかになっています。痴漢は、再犯率が他の性犯罪に比べて圧倒的に高く、また再犯期間が短いこともわかっています。加害者に繰り返し痴漢行為をさせないためには、行為が判明した時点での働きかけが重要になる、ということです。

 以上から言えるのは、早期対応こそが肝になる、ということでしょう。対応が早ければ早いほど、再び犯罪を犯す可能性が低くなる。それはつまり被害者を減らすことにも繋がります。

 これは、性犯罪を犯した人間は、その後、家庭や職場の環境が厳しくなり、自立が困難になっている傾向もみられることからも効果的な対応だと思われます。性犯罪者を罰金なり執行猶予なり実刑なりで罰して終わりではなく、再び加害をさせないためにも、社会復帰を円滑に進めるためにも、自立を可能にするような支援こそ意味がある。

 「罪を犯した人間に対して、なぜそこまでケアをしなくてはならないんだ」という気持ちは少なくない人の中にあるでしょう。罪を憎んで人を憎まずと言いますが、感情的にはなかなか割り切れないものがあります。「憎んではいけない」とは思いません。被害者や家族など身近な人にそれを言うのは酷です。ただ、第三者であるならば、罪も人も憎みながら、これ以上被害者を増やさないようにするための効果的な施策を選ぶことが、結果的に多くの人を幸せにするのだろうと筆者は思います。
(門田ゲッツ)

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