
コンドーム、どうやって着けていますか? Photo by Hey Paul Studios from Flickr
「コンドームは、正しく着けましょう」「じゃないと、望まない妊娠も感染症も防げなくなりますよ」とはよく聞くものの、コンドームの構造はとてもシンプル。先端のぷくっと膨らんだ〈精液だめ〉の空気を抜きながら装着するぐらいは知っているけど、そう失敗するものではないのでは……?
「コンドームはシンプルでも、ペニスはそうではありません。日本人の多くは包茎ですから、ペニスの準備をしてからコンドームをかぶせる。このステップを省いてしまうと、セックスの最中に脱落したり破けたりします」
そう教えてくれるのは、神奈川県・厚木市立病院泌尿器科の岩室紳也先生。YouTubeで「コンドームの正しい着け方」を配信し、これまでの通算再生回数は600万以上。AIDSの予防を啓発し、青少年を安全で愉しいセックスライフに導くべく、全国各地の中学校・高校・大学での講演に飛び回るうち、いつしか〈コンドームの達人〉と呼ばれるようになりました。
ーー包茎とそうでない場合とでは、コンドームの着け方が違うんですね。
岩室紳也先生(以下、岩)「コンドームは『着けりゃいい』ってものではないんですよ。欧米では割礼の習慣があって、勃ったら皮が余らないので、そのままかぶせてストンと下ろせばいい。着け方を説明するにもバナナにかぶせれば十分伝わりますが、日本人にはそれだけではダメです。
1 皮を全部むいて、亀頭部を露出させる
2 アンダーヘアを整え、巻き込まないようにする
3 包皮を片手で抑えながら、もう片手でコンドームを下ろす
4 コンドームを少し戻して余った皮を露出させ、その皮とヘアをもう一度整えてから、あらためてコンドームを根本までゆっくり下ろす
これだけのステップが欠かせません。女性のみなさんにもまずパートナーが包茎かどうか、こうしてコンドームを着けているかどうか、一度チェックしたほうがいいですよ。合言葉は、『かぶれば包茎、むければOK!』です(笑)」
包茎って女性に関係あるの?
ーー仮性包茎であれば、特に問題はないと思っていたのですが……。
岩「実は包茎の定義というのは、ないに等しいんです。無理やり引っぱっても亀頭が顔を出さない=真性包茎、に異論がある人はいないでしょうが、仮性となると解釈がさまざまです。でも大事なのはそこではなく、皮をむいて洗っているかどうかということ。ただ石けんをつけて流すだけでは不十分。スポンジでゴシゴシ洗います。傷つけそうでコワイという声も聞きますが、何も血だらけになるわけじゃなし(笑)。これでがんが防げると知ったら、男性は今夜からでもそうやって洗いたくなるはずですよね。がんというのは陰茎がんで、真性包茎の人がほとんどです。ヒトパピローマウイルス(HPV)などによってもたらされる病気ですが、これを洗い落とせばリスクは減らせます。HPVは女性にもたらす影響が大きいですよね」
ーーはい、子宮頸がんの原因となります。
岩「男性からHPVをもらって、女性ががんになる。子宮頸がんというとワクチンが取り沙汰されていますが、男の子たちにペニスの洗い方を習得させるのは、いますぐ手軽にできる予防法なのでもっと注目してほしいですね。ただ、セックスの直前に洗ったところで100%落ちるわけではないから、やはりコンドームは必須です。HPVに感染してから約10年後に子宮頸がんを発症するケースが多いといわれますが、15~19歳の妊娠人工中絶のグラフと、その世代が25~29歳になったときの子宮頸がん罹患率のグラフとを、重ねてみると傾向がほぼ一致します」