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画一的な働き方が劣等感を生み出す。ADHD当事者が働きやすい場は「健常者」だって働きやすいはず

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ADHDが働きやすい職場は誰もが働きやすい

 カナのようにADHDを理由として困難を抱えている人に対して行われるべき支援としては、薬物療法、心理療法などにかかる費用の援助と、本人をとりまく環境の整備が挙げられますが、全体的にまだまだ改善の余地があるのが現状です。

 薬物療法では近年、ストラテラという初めての本格的なADHDの専門薬が処方され始めました。 ADHDのメカニズムはまだ明らかにはなっていませんが、脳内のノルアドレナリンという神経伝達物質が少ないことによって注意散漫や多動などの症状が生じると考えられています。ストラテラは、そのノルアドレナリンの濃度を上昇させることで、集中力や注意力を高め、ADHDの症状を緩和します。基本的に、この薬には健康保険が適用され、比較的少ない負担で手に入れることができます。

 一方、心理療法では数多くの種類の療法の中からクライエントに適したものが選択して行われますが、全額自己負担になっているのが現状です。費用は機関によって変わりますが、大体1時間1万円ほどの料金がかかってしまいます。

 では、環境の整備とは、具体的にどのようなことが求められているのでしょうか?

 大学の友人、ミキもADHDの当事者です。スラリとした長身に、ロングヘアの似合う彼女。大学時代はほとんどの授業を一緒に受けていました。現在は食品メーカーで働いています。大学を卒業して数カ月ぶりに会ったときに、ADHDを抱える人が働きやすい職場とはどのような職場なのか、聞いてみました。

「当事者が自分の認知・行動のクセを説明できる雰囲気があるってことと、他の社員がその説明を理解して当事者の特性に合わせる余裕を持っていることが、ADHDが働きやすい職場の特徴なんじゃないかな。まずは、当事者が自分の特性を他の社員に説明することがスタートだと思う。周囲にサポートを求めるなら、自分で“こうして欲しい”って提案することが大切だよね。例えば、『話を聞きながらメモを取るということが難しいので、聞くこと、書くこと別々に時間を取らせて下さい』って頼むとか。そうしたら後は、他の社員が当事者の特性をどれだけ理解して、どこまで合わせてくれるかによると思う。

 突き詰めていくとさ、社員全員に同程度の能力を要求するんじゃなくて、個人差があることを理解してくれる場ってことになる。結局ADHDが働きやすい職場って、ADHDも健常者も関係なく働きやすい場所ってことになるんじゃないかな」

 確かに、“ADHD当事者にとって働きやすい職場”は健常者の人にとっても働きやすい職場と言えるでしょう。例えば、上司の説明が理解できなかったとき、「理解できなかったので、もう一度伺ってもよろしいでしょうか」と頼みやすい職場は働きやすいと思います。社員同士が自分のできること・できないことを共有することは共同作業をスムーズにし、仕事を円滑に進めることにつながります。

 また、『困ってるズ!』というメールマガジンに寄せられた、障害を抱える当事者の投稿では、当事者の方が「助かった」と感じる職場の人の対応として、

・当事者のするべき仕事に順番をつける
・用件やアドバイスなどを当事者に伝える際は、何度も言う
・視界のちょっとした変化などにより注意がそれてしまうADHDの特性を考慮し、壁向きの席を提供する
・当事者が苦手な仕事はできるだけまわさないよう配慮する

 などを挙げてらっしゃいます。

 もちろん、同じADHD当事者でも、抱える症状は人によって違いますから、ミキが言ったように、それぞれの当事者が自分の状況を伝え、周囲がそれに対して丁寧に耳を傾けていくことがまずは大切です。

 日本では規則などの、一定の基準に従って全員が同じ働き方をすることが「美徳」とされがちですが、それぞれの特性に目を向け、その人にとって最適な働き方を考えていった方が、働きやすいですし、社員の特性を生かせるので業績が良くなる可能性も高いのではないでしょうか。

 そのような職場を作るためには、人は、さまざまな特性を持っていることを社員全員が理解することが必要だと思います。社員全員が自分の得意なこと、苦手なことを記入できる表を作り、それをオフィスの壁に貼るなどしてみると良いかもしれません。先入観に囚われず、相手の特性やおかれた状況を丁寧に汲み取れる人間でありたいものです。
(北原窓香)

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