「運動したくない理由」を持つ女性を動かす、セルライトをクールに見せた世界初の動画

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 確かに、この動画は伝統的な広告とは全く違うアプローチで作られていて、だからこそ、受け手である一般女性に「運動をしたい!」という気持ちを呼び起こさせてくれるんですね。伝統的な「広告」というのは、商品をより良く見せるものである必要性を持つため、美しい容姿の人間が、美しくスタイリングされ、美しい景色の中(合成であっても)、美しい表情を見せます。しかし今回、誰から見ても美しいわけではない「リアル」な映像をつくり、キャンペーンを展開したことが革新的でした。

 広告と運動といえば、私はこんな経験をしたことがあります。

 現在急成長中のスポーツブランド「アンダーアーマー」が行っている、女性アスリートを起用した広告キャンペーン“I WILL WHAT I WANT(私の意思のままに)”。日本人では、モデル兼ボクサーの高野人母美さんやサッカーの宇津木瑠美さん、テニスの澤柳璃子さんなどがCM動画に出演し、とてもスタイリッシュな映像になっていました。これを見て、私は「アンダーアーマーっておしゃれだなあ」とは思いましたが、自分とはあまりに異なる女性アスリートたちの強靭な肉体を見て、逆に、「体動かすのって大変そう」と尻込み。それでも「運動をしたい」気持ちを持ってはいたので、自分を奮い立たせて、ウェアを買いに行きました。

 しかし、スパッツを試着して自分の太ももが太いことにへこみ、こんなの着たくない、運動はやっぱりやめよう、という本末転倒な結果に……。皮肉にも、美しすぎる広告によって、「他人の目を気にして、スポーツをすることに臆病に」なってしまったのです。

 対して、スポーツイングランドの動画は、アスリートやモデルではない自分と同じような一般の女性が、思い思いの格好で本当に気持ち良さそうにスポーツしているので、心の底から「服なんてなんでも良いんだ! あー、私も体を動かしたい!」と思えました。

女性特有の障壁を取り除き、男女の格差を解消する。

 このキャンペーンを主導したスポーツイングランドのCEOであるジェニープライス氏は「(男女の運動人口の)200万人という違い。これは、男女格差の一つと言えるでしょう。でも、75%の女性がもっと運動したいと思っている。だからこそ、解決されるべき課題だと思うんです。顔を火照らせて、汗をたくさんかいて、かっこよくできなくても、そんなのは全然気にすることではありません。自分のやりたいことを思い切りやる女性である。それ自体が素晴らしいことなんだ、ということをこのキャンペーンを通じて伝えたいのです」と語ります。

 このコメントを読み、やっぱり男女の格差解消において、イギリスは、日本の2,3歩先を行っているなあと思いました。というのは、日本でも若年層において女性の運動頻度は男性より低いというデータがありますが、残念ながら、まだまだ解決されるべき課題として認識されていません。また、日本で女性を対象におこなわれた「運動しない理由」調査を見ると、項目には「お金がない」「時間がない」など、男性と同様の理由しか選択肢がなく、「体に自信がない/人の目が気になる(ゆえにジム通いやランをためらう)」などの、女性特有の理由、心の壁が存在することに思い至っていないのです。

 スポーツイングランドのキャンペーンでは、まず、女性の運動不足を課題として捉えた上で、女性が「なぜ」運動にハードルを感じているか原因をきちんと探り出し、さらに、そのハードルを低くしようと取り組んでいるところが、本当に素晴らしいと思います。

 春が近付く季節の変わり目、この動画を見て体を動かして、元気に乗り切りましょう!

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