家庭で「自信」を奪われた専業主婦が、何も破壊せずに自らを再生させる『マダム・イン・ニューヨーク』

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 いわゆる「シャドーワーク」と呼ばれる家事労働を毎日一生懸命こなしても、誰が評価してくれるわけでもない。長い間、私たち女性の多くは常にそんな不当な立場に憤りを感じて生きてきた。あるいは、そのこと(憤るべきである、ということ)にすら気づかずに、当たり前のことだと信じてきた。家計の足しになるパートタイマー収入があってもなお、軽んじられたりもする。シャシのように自分のやってきたことが決してつまらないことではない、立派な仕事なんだと励ましてくれる仲間と出会うこと(英会話教室の仲間は彼女のことを〈起業家〉と呼ぶ)は、大きな希望となるだろう。

 同時に、専業主婦という「仕事」を否定して「起業」を賞賛するものでは決してなく、シャシが家族への敬意を忘れないところが、今作の優れた点だ。家族の態度に対し絶望的になったことはあっても、シャシは家族を信じ、愛している。離婚等の「破壊」を経ずに、彼女自身の誇りも、家族間の関係も「再生」する。この映画の中で、私が一番好きなセリフはこれだ。

「夫とは、最高の親友のことです。結婚とは、対等な者同士の約束なのです」

 名言ではないだろうか。

 そうしたことを描きながら、この作品は特別にマジメなトーンで社会問題や苛立ち、閉塞感などをぶつけてくることはなく、インド映画お得意の歌とダンスも程よく絡み、ニューヨークという街の魅力も存分に伝えてくれる、明るく楽しい映画だ。彼氏や夫、家族と自宅で鑑賞し、彼らと話し合うきっかけに使うのもお勧めである(ちなみに今作のDVDレンタルはTSUTAYAのみなので、ゲオ派の方はお気をつけて……)。

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