理系学部に進学する女性は男性に比べて少ない
この連載は、女性をめぐる社会問題について書くということになっているのですが、女性についてもこうした分析と同様のことが言えます。どんな女子高生だったかが重要だ、というと下世話な感じがするかもしれませんが、どんなことが好きで、どんな活動に参加して、どこで遊んで、どんな友達がいて、どんな生活をしていたのか、何の科目が好きだったのか、どんな高校に通っていたのかということがその後の人生を決めるうえで非常に重要な要素になるのです。そして、なぜあるモノを好んだり、ある行動を選択したりするのか、それさえも環境によって大きく影響され、その環境は学校によって大きく変わります。
そして、女性の場合は男性に比べてもっと複雑です。ある女子高生がクラスメイトの男子と「好きなもの」「得意なもの」が全く同じで同じ進路を選んだとしても「世の中が女子と男子の違いをどう思っているか」によって、個人の望みや能力とは全く違うところで、人生が大きく引っ張られてしまうことが少なくありません。
ここで、女子と男子の進学傾向の違いを「男女共同参画白書平成25年版」を参考に見てみましょう。
大学進学率は男子54.0%、女子45.6%と男子の方が8ポイントほど高いのですが、大きな違いはありません。一般的に理系の方が文系よりも就職で有利かつ給与も高いと考えられているので、理系・文系学部の進学率の男女の違いを見てみると、女子学生が最も多い専攻分野は25.6%の社会科学分野、次いで22.3%の人文科学となっています。一方男子が一番多いのは38.9%の社会科学分野、次いで23.6%の工学分野となっています。女子が比較的多い理系学部は薬学・看護学の13.4%です。また、女子の場合は家政、芸術、そのほか、という分類の学部系統も17.7%と多いのですが、男子はこの比率が女子よりも少なく10%弱となっています。
この数字を見ただけでは単純に男子が理系を選び、女子が文系を選ぶ、とは言えませんが、女子が理系に少ないことは明確な事実です。しかし、この事実をもってすぐさま「女性の方が理系スキルが低いから、あるいは理系を選ぼうとしないから就職、給与、昇進などで不利」と結論付けることできません。日本では文系出身者の方が将来的な昇進・昇給では有利だという研究があるように、文系であることで不利益を被ることはないのです。