
Photo by Dustin Iskandar from Flickr
はい、保育園落ちました。ペラッと薄い封筒が届き〈利用順位に達していないので不承認〉だそうです。役所の窓口で問い合わせてみると、第1希望だった認可保育園は、0歳児9人枠に対し申し込み者161名(倍率約18倍!)、その中で我が家の順位は141番。私はフリーランス稼業で自宅仕事が多いことで減点となり、〈両親フルタイム勤務の会社員〉と比べると不利になることは承知のうえではありましたが、まさかここまで低いとは。
しかし各家庭の事情はそれなりに考慮してくれるという情報を耳にしていたので、事前に窓口で「自宅で仕事しているとはいえ子どもを見ながらでは昼間は全く作業できないし、取材撮影打ち合わせ講演等外出しなくてはならないほうが多い」という〈フリーランスあるある〉から、「収入の約半分は昆虫料理関連なので、タランチュラや蜂など、怪我する可能性がある生き物を扱うことも少なくなく、同伴就労は難しい」という特殊事情までを訴えてみたものの、点数には全く反映されなかった模様です。
ただでさえ寝ていない中の書類資料作りと区役所へ出向いた労力分、激しく損した気分。窓口で、ひとつひとつの話に「そうですよねえ~」と共感たっぷりに相槌を打ってくれたのは、ただの雑談レベルだったんかいと、乾いた笑いがこみあげてきます。資料として持参した拙著『むしくいノート びっくり! たのしい! おいしい! 昆虫食のせかい』(カンゼン)をパラリと見て、「ゴキブリも食べられるんですねえ~」なんてご感想を頂戴したので「中までしっかりチェックしてくれるのか」なんて感心したのに、あれもただの個人的興味だったようです。期待したのが図々しかったのか。
都心部の待機児童問題に対する悲鳴は、4月入園の合否が発表された今がピーク。はてな匿名ダイアリーの「保育園落ちた、日本死ね!!!」の投稿は今やテレビや国会でも取り上げられるなど日本中で有名になりましたが、壮絶な保活の末、勝利を手にした人のブログも鬼気迫るものがあります。「保育園の第一志望愛かったけど、でも日本死ね」なる投稿を読み、ここまで真剣に対策できなった自分の甘さを反省……なんて誰がするか! です。ここまでしなくちゃ利用できない福祉施設って、一体何なんでしょう。同ブログの一文が、現在の保活を的確に表しています。
「他の事例に強引に置き換えて言うと、運転免許の更新に関する行政が機能不全に陥っていて、個々人が自己責任のもとで綿密な情報収集をおこなって裏技を駆使しないと、普通に免許の更新が受けられない……というくらい、メチャクチャなことになっているのだ。こと保育関連については、この国を「日本」だと思ってはいけない。東南アジアか中南米の行政糞国家の住民になったつもりで対策を立てた方がいい」(一部修正の上、引用)
子育ては楽しいけれど、日本に対する考えを改めないと、この先やっていかれないんだなあと実感させられる名文です。
さてすっかり前置きが長くなりましたが、待機児童という言葉が世に出回り始めたのは、バブル後の1990年代初め。それから現在26年近く経っているのに、問題が一考に解決されていないように思えます。問題が解消されないのはなぜなのか? 怒りの矛先は具体的にどこへ向ければいいのか? 立命館大学産業社会学部の柴田悠准教授に解説していただきました。
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