どのように「男は家事をしない。できる女も家事をしなくなる」状態を変えていけば良いのでしょうか?
まず、家事・育児を外注することそのものが悪いわけではない、ということは確認しておきたいと思います。問題は、外注して安く済ませようという発想です。
ベビーシッターやメイドの仕事は「女性の仕事」という枠にはめられています。「女性の仕事」は、「主婦でもできる仕事=誰でもできる簡単な仕事」とみなされており、結果として賃金も社会的地位も低くなります。人々の「主婦なんか」「主婦でも」という意識が、こうした「女性の仕事」の評価を下げているのです。保育や介護もそのひとつで、「女性の仕事」は、たとえ専門職でも、またそれを担うのが男性労働者であっても、「女性の仕事」ではない専門職、たとえば弁護士や医師に比べて、キャリアアップや昇給が非常に低く抑えられています。しかし、介護や保育は本当に「誰でもできる簡単な仕事」なのでしょうか? それを安く外注することは本当に理にかなっているのでしょうか?
社会的に大きな需要があるにもかかわらず、保育士不足、介護離職といった問題が起きるのは、彼ら彼女らに対する待遇、すなわち賃金や社会的地位があまりにも低いからです。つまり、「女性の仕事」を安く外注することは社会全体で見た場合、理に適っているものではないのです。「女性の仕事」に対する社会的評価が上がれば、誇りとやる気を持ちながら、文化的で人間らしい生活が送れる水準へと賃金も上がるはずです。これまで家の中で女性がしていた仕事を、安く働く女性に外注することで「わかりやすく能力の高い人だけ総活躍」を推進するのではなく、まずは、愛の名のもとに行われる無賃労働ともいえる「家の中で女がする仕事」に光を当てること、男性も女性も同じように負担する方向へのシフトが必要です。
自分たちで家事育児を回せないほどの長時間労働を強いられているのが日本の勤労男女であり、家事や育児の外注は不可欠です。そこで必要なのは「家の中で女がする仕事」は誰でも簡単にできることではなく、熟練した技術やセルフマネジメント、マルチタスク能力やコミュニケーションスキルが必要な仕事なのだということを理解し、正当に評価することです。家事・育児の社会的評価が上がり「高い技術が必要な仕事を外注する」という意識が醸成されれば、「女性の仕事」の外注を担いうる保育士や介護士の社会的評価や賃金を上げることが可能となるはずです。せっかくの「一億総活躍」ですから、そこまで見据えて議論をしていってほしいと思います。
参考文献
OECD Balancing paid work, unpaid work and leisure
厚生労働省:女性活躍推進法特集ページ
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