男女不平等の日本社会が「子どもと女性の貧困」を生んでいる 『女性と子どもの貧困』著者・樋田敦子氏インタビュー

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誰もが陥る貧困を自己責任で語れるか

―― 本書では、闇金に手を出して貧困に陥ってしまうというケースが紹介されています。「闇金にお金を借りるのが悪い」と考える方もいると思うんです。

樋田 普通、お金を借りなければならなくなったら親とか親戚とか友達とかを頼るのでしょうけれど、家族との縁が切れていたり、友達がいなかったりして、頼れる相手がいない人もいます。そうなると、やむを得ず闇金にお金を借りてしまうこともあるのではないでしょうか。

―― 当たり前のように頼れる親や親戚のいる人にとっては、想像しづらいと思います。

樋田 そうですね。頼れる人が少ないと、情報も少なくなってしまいます。自治体の社会福祉協議会などでは、生活福祉資金を低金利で貸付してくれるようなところもあるんですよ。しかし情報がないから、たまたま家のポストに入れられた闇金のチラシを見て、手を出してしまうのです。

貧困は、単にお金がないというだけではなくて“情報、人との関係、つながりの貧困”でもあるんですよ。今は闇金だけじゃなくて若い世代の女性は、クレジットカードでキャッシングしている人もたくさんいます。クレジットの場合だと、督促状が郵便箱に届くだけなので、外からはその人が困っていることが分からないですよね。闇金だったら、借金の取り立てがきて、玄関のドアをドンドン叩いて「お金返せ」と言いに来るかもしれない。そうしたら少なくとも近隣の住民は「あの家は困窮しているんだ」と気がつきますよね。しかし「困ってるの?」と声をかけるより「近づかないでおこう」と考える人のほうが多いかもしれませんね……。クレジットカードのほうが怖いです。借金を返せなくて、もう1枚クレジットカードを作ってキャッシングするとか、そういう困窮状態にいる女性もたくさんいます。そういう人は表に出てきません。

―― 離婚にせよ借金にせよ、貧困に陥った人に対して、自己責任論を投げかける声も多いですが、樋田さんはそういった声に対してどうお考えですか?

樋田 自己責任論で語られることが多いのですが、決して自己責任ではないと思います。“離婚した人が悪い”“DVするような男と結婚するから悪い”“育てられもしないのに子どもを産むのが悪い”そういう声はあります。でも、そうじゃないと思うんですよね。たまたま結婚した相手がDVをするような人だったり、お金を稼がない人だったら貧困に陥ってしまうこともある。誰もが陥る可能性があると考える必要があると思っていたほうがいいのです。他人事ではないし、「自己責任」「あんたが悪い」と言って済む問題ではないと思います。

―― 乳がん治療のために、老後のための貯金が半分になってしまった女性のお話は、自分もこんな風に貧困に陥りうるなって特に思いました。

樋田 病気は、事前に分かるわけではないですからね。乳がんの場合は10年ぐらい経たないと緩解したとはいえないので、その間、「再発しないだろうか」という精神的負担を感じ、尚且つ高額な治療が長期に及ぶので、貧困に陥りやすいと思います。一応、支援制度はあるんですけど、申請手続きとか、複雑なんです。病気の治療をしながらそういうこともしないといけないのって、本当に大変なんですよね。そのために制度を知らないまま、支援に繋がれない人はいると思います。一度貧困に陥ると回復するのは至難の業。セカンドチャンスがないです、この国はね。本当に病気や事故とか、いつ起こるか分からないことなので、そういったことも色々な人に知っておいてもらいたいと思います。

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