「子供がかわいそう」の声も気にならなくなった。結婚、育児、仕事、婚外恋愛、家族…告白の書『かなわない』植本一子の“いま”/インタビュー前編

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もう嘘をつかなくてもいい

――『かなわない』は2014年1月から6月までのブログ日記とエッセイ数編で、2014年秋にまず自費出版されていますよね。まだ好きな人と家族とのゴタゴタが解決したと言い切れない、傷が生々しい時期だったんじゃないかと思うのですが、どうして自費出版しようと思われたんですか?

植本 もともと、その時期のブログ日記を書き終わったぐらいの時期に、友達のライブイベントがあって、そこでZINE(※同人誌)の作品集を売るスペースがあるから、「何か売るもの出してみない?」と誘われたんですね。私、写真のZINEは前に作ったことがあったので、そういうものでもいいかなあと思ったんですが、せっかくだからブログの内容をまとめようと。そこにブログに載せていない後日談など未発表のエッセイを足してまとめたら、ちょっとは売れるんじゃないかなあって思って。それでイベントに間に合わせるようにまとめたのが最初です。

――ちょっとどころではなく、売れたんじゃないですか? ネットに上がっている感想で、評判すごかったですよ。

植本 最初のイベントでは100冊刷って、20冊しか売れなかったですよ。でもお友達のお店などにちょこちょこ置かせてもらっていたら、いつのまにか増刷、増刷で、地方のいろんなお店から「取り扱いたい」と注文が入るようになって、この一年で1400冊売れました。でもこのZINEは原価が高いので全然利益にならないんですけどね。それで昨年11月に、タバブックスの編集長さんから「書籍化しませんか」とおっしゃっていただいたんです。

――なるほど。14年6月までのことを、10月に出すっていうのは、気持ちの整理がそのわずかな期間についていたんですか?

植本 ついてなかったんですが、書きながら気持ちを整理していったような感じです。

――内容が内容なだけに、ためらいはなかったんですか?

植本 出版することに? なかったんですよね、それが。ためらい、全然、なかったです。

――そこが意外で。わりと、本のなかでは「世間」とか「まわりからの見られ方」を気にしているという描写がいくつかあるじゃないですか。そういう植本さん像と、これを世に出す度胸とが、いまひとつ一致しなくて。

植本 これをまずブログに書いた時点で、「ああもう私、嘘つかなくていいんだな」って、楽になれたんですよ。私は何も嘘は書いてないし、自然な気持ちの動きを書いていて、ここにあるのは自分そのものだと思うんですね。これを書いたことで、もう誰にも嘘をつかなくていいってすっきり吹っ切れて。だから出版することにも、もはやためらいがなかったですね。

――嘘つかなくていいっていうのは、大きな世間にもだし、旦那さんや子供たちにもだし、あとは実家のお母さんにも。

植本 そうそう、お母さんもこれ、読むでしょうきっと。だから私、もうこれからは無理に頑張って実家に帰らなくてもいいし、自分がやりたいことをお母さんのこと気にしないでやれるようになった、自然に振る舞えるようになったなあって。

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