大人の都合を内面化した「いいお母さんごっこ」をやめる。規範から抜け出すべくもがいた『かなわない』植本一子/インタビュー後編

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「親と子」だけで閉じない家にしていきたい

――先のことって、想像することありますか? たとえば20年後だと子供たちが独立して植本さん50代、石田さん70代。

植本 えっ、考えないです。考えるんですか?

――考えることがあるので、お伺いしてみたくて。そろそろ両親も亡くなってるかもしれないし、子供も成人して巣立つから私は一人暮らしになって、どこでどんなことをして稼いでいこうかなーって。今よりもっとインターネット技術が発達してて、50代の自分でも全国どこでも仕事できるかもしれないなあとか。私は自動車の運転がとても下手なので今は東京以外に住みたくないんですが、20年後には全自動運転車が普及しているかもしれないと思うと、地方というか実家の跡地にも小さな家を建てて住めるかなあとか。

植本 それ、夢がありますね! 20年後のことはさすがに考えないんですけど、10年後くらいのことだったら、なんとなく考えることありますよ。家族を拡大したいんですよ、私。

――子供をもっと産むという意味ではなく、ですかね? 拡大っていうのは?

植本 育児や家事をシェアできる人に同じ家庭に入ってもらって、今は大人2子供2の4人家族なんですけど、大人がもうちょっと増えて5~6人の家族になれたら、子供たちにとっても「大人=親」じゃなくなって、いい循環ができるんじゃないかなあって思って。今、子供のシッターとしてたまに来てもらっている20代の未婚男性がいるんですけど、全然恋愛とかじゃなくて、すごく面白い人で、どうせなら一緒に住んでもらえたらいいんじゃないかと思って打診してるんです。でもその男性もいずれ結婚とかしたいし、一緒に住むとなるとどうなのかなと迷っているみたい。拡大家族ってどこが良いと思うかっていうと、まず「広い家に住める」。家賃を夫婦だけじゃなくて大勢で折半することができるから。

――その点はルームシェアと同じですね。一人暮らしだと20平米くらいの狭い、廊下にキッチンついててトイレとバスルームがくっついたような部屋に8万円とか出して住むけれど、二人暮らしにすれば50平米の2LDKに7万ずつで住める、という。共用のキッチンもバスも良い設備だし。

植本 そうそう。住む家が広くなることによって、単純に住環境が良くなる。それぞれのプライベート空間も持てる。それに大人が大勢いることによって、育児もシェアできると思っていて。他人の子供の世話なんて見たくないよって人もいるかもしれないけど、うちの場合はもう小学生なんで、手取り足取り赤ちゃんの面倒見るとかではなく。子供にとっても親以外の大人との関わりがたくさんあるほうが、いろんな大人がいるんだということがわかって、世の中の面白さが伝わるんじゃないかなと。昔は、親戚のおじさんが家に一緒に住んでる友達とかいませんでした?

――20~30年前の私が子供だったとき近所にはいなかったですけど、それよりもっと昔の、親が子供だった頃にはあったみたいですね。私の実家も父が学生だった当時は祖父の妹や弟がまだ一緒に住んでたそうですし。まあ祖父が7人兄弟の長男だったというのもあるでしょうけど。父にとっては家族じゃないけど血縁関係のある同居人たちですよね。

植本 そういうのありましたよね。今は、核家族じゃない、血縁にもこだわらない、新しい家族のかたちがあってもいいかなと思って。楽しい家庭環境にしたいというだけなんです。わりと、私の家族の理想はそこかもしれない。

――本に書かれているように、もともと植本さんは、理想の家族像を持ってましたよね。それは「仲良しのお父さんとお母さんがいて、子供たちがいて、愛がある」という核家族だった。その像からはもう、逸脱していい、別のかたちの理想像を描いているということ?

植本 そう、ですね。核家族じゃなくて、子供たちにとって「おじさん」とか「おばさん」とか、そういう人が家の中にいるようなかたちがあってもいいんじゃないかな、と思うんですよね。タバブックスの出している「仕事文脈」という雑誌の第7号の特集が「家と仕事」なんですが、そこにこの拡大家族の話を寄稿しています。

――読んでみます。

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