無戸籍者を生む法律の穴=「嫡出推定」「再婚禁止期間」は離婚した女性への「懲罰」である/『無戸籍の日本人』著者インタビュー(前編)

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100日への短縮は、意味がない

ーー改正案には、離婚時に女性が妊娠していないと証明できれば100日を経過していなくても再婚を認めるとありましたが、それはつまり前夫との婚姻中に別の男性との子どもを妊娠していたら再婚は許さないけど、していなければ許すという意味なのでしょうか?

「実質的に、そうなりますね。不貞の代償を払うのは女性、それから女性の子どもだけなんです。でも、子どもが無戸籍になって困っているおかあさんたちから話を聞くと、ことの始まりは前夫の浮気や暴力というケースが多いこと多いこと。裏切られ、追いつめられて、そのなかで新しいパートナーと出会うのが典型で、もともと彼女たちに離婚の意志はないんです。それなのに、『不貞をおかしたらこういう面倒なことになるぞ』と法律で脅して離婚の抑止力とし、一定期間は再婚できないという懲罰が女性にだけ与えらているので、100日に短縮されても何も変わりません。いってみれば、姦淫罪の代わりですから」

ーーかつての姦淫罪は、既婚女性と、その不貞相手である男性に適用されるものであって、既婚男性は不貞をおかしても罪に問われることがありませんでしたね。

「離婚前から事実上、夫婦関係が破綻していた末の不貞だったとしても、女性には戒めが与えられます。一方、男性が女性を裏切って不貞をおかしたとしても、再婚禁止期間や子どもの無戸籍といった形で罰せられることはありません。明らかに男女差別ですよね。妊娠していないことを証明したら再婚を許してやるといいますが、それを証明するのは女性にとってストレスになりえます。第一、妊娠しているかしていないかはプライバシーなのに、それを踏みにじっていますよね」

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 離婚前に妊娠した女性が罰せられなければいけないのだとしたら、罰するのは誰なのか? そして、300日を0日にしたいと訴える井戸さんの原動力となっている想いとは? 後編に続く。

(三浦ゆえ)

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