痴漢被害が起きる瞬間を、断ち切る剣になるか。「痴漢は俺の敵」バッジの可能性

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痴漢被害を減らすための新たな方法として「バッジを付ける」という行動がネットを中心に話題になっています。

きっかけは去年、痴漢被害に頻繁に会っていた女子高生が「私たちは泣き寝入りしません」というバッジを自作して電車に乗ったところ、痴漢被害に遭わなくなったエピソードが広まったことから。その後デザインを公募し、「痴漢抑止バッジ」として配布がなされました。

一方、「痴漢は女性だけではなく、男性の敵でもある」という思いから、男性用の痴漢抑止バッジを作成する動きも生まれています。3月12日に、男性用痴漢抑止バッジの配布イベントが東京・恵比寿で行われ、約40名が集まりました。

男性にとっても「痴漢は俺の敵」

今回のイベント主催者は、そんきょばさんという男性。痴漢被害を無くすために男性もできることがあるという考えから、「痴漢は俺の敵 困っている人は助けます」と書かれた缶バッジを作成しました。

痴漢は女の敵だという言葉は聞きますが、痴漢をする人間は男性の敵でもあります。大事な女性が痴漢被害で傷つけられたという男性、痴漢冤罪による誤認逮捕に怯える男性、そして痴漢被害に遭う男性もいるのです。そしてそんきょばさんには、痴漢は自分には無関係な、「女性の問題」だと思い込んでいる男性にも、痴漢は社会全体の敵であり他人事ではないということを認識してもらいたい、という思いがありました。

先駆けて取り組みが始まっている女性用の痴漢抑止バッジには、「泣き寝入りしません」と書かれています。

「この活動を知った時、男性も何かしなきゃと思いました。痴漢被害の問題を語る際、世間では女性(を始め痴漢被害者)に一方的に自衛を求める風潮がありますが、それはいじめられっ子だけに『お前頑張れよ』というのと同じ。警視庁のHPには『性犯罪から身を守れ 許すな痴漢』というページがありますが、これも被害者に向けて『自衛してくださいね』『痴漢被害にあったらあなたが戦ってくださいね』という内容になっています。被害者に痴漢行為に立ち向かえと言うのではなく、痴漢被害を未然に防ぐために自分たち男性にもできることがあると考え、男性用の痴漢抑止バッジの製作をしました」

痴漢被害の問題については、被害者の女性VS加害者の男性という構造で語られることが多く、一般の男性の声はかき消されてしまいがちです。そんきょばさんは今回の活動を始めるにあたり、男性の声を可視化しようとメッセージを募集しました。

多数集まった声の中には、娘が痴漢被害に遭って電車に乗れなくなり、今も痴漢加害者が誰かを傷つけているかもしれないと思うと許せない、というものや、家族と話をしたら、母と妹が日常的に痴漢被害を受けていたということがわかった、というものもありました。また、自分自身が痴漢被害に遭ったという声も少なくありませんでした。

一方で、派手な服装だから痴漢被害に遭う、といった誤解や無理解も世の中には未だあります。

「未だに男性社会と言われてしまう国だからこそ、男性の意識が変わると、痴漢被害を取り巻く状況は大きく変わる。改めて男性からも、痴漢行為を許さないと示すことによって、痴漢行為がやりづらい世の中にしていくことができると考えています」

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