
エマ・ワトソンとベル・フックス(papermagazineオフィシャルinstagramより)
エマ・ワトソンが、女優を一年間休業するというニュースが先月(2016年2月)流れた。
エマと言えば、2001年から2011年にかけて8本制作された映画『ハリー・ポッター』シリーズでのハーマイオニー役で有名だが、ここ最近は、フェミニズム関係の活動でも話題となってきた。2014年9月に、「UN Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのために活動する国連機関)」の親善大使として、ニューヨークの国連本部で行ったスピーチの動画をご覧になった方も多いと思う。「HeForShe」というキャンペーンについての情熱的なそのスピーチでは、ジェンダー平等の実現のための運動への参加を男性たちに呼びかけ、また、男性が「男らしさ」の固定観念から自由になるように(それによって女性の側にも変化が訪れるだろう)と訴えるものだった。
ガール・クラッシュ
今回エマは、女優業は一年間の休業に入っており、その間は自己成長のための読書と、「HeForShe」のキャンペーンの活動に専念することを発表した。このことついてエマが語ったのは、NY発のカルチャー/ファッション雑誌『Paper』 2016年4月号に掲載された、著名な黒人フェミニスト作家で活動家のベル・フックスとの対談でのこと。
この対談は、同号に一挙掲載された「Girl Crush」と題するシリーズ対談記事の一本として行われたもので、「Girl Crush」とは、女性が女性に(恋愛感情とはまた別の形で)夢中になる・惚れ込むこと、という感じだろうか。お互いを賞賛し合っている女性同士が、今日女性であることはどのようなものか、啓発的な視点が得られるような対話を交わす、という企画だそうだ(ビル&メリンダ・ゲイツ財団のメリンダ・ゲイツによる序文まで付いている)。
フックスがエマに「Girl Crush」したきっかけは、女性や表現について論じる文化批評家として、エマ演じるハーマイオニーのキャラクターに魅了された時のこと。エマの方は、国連の親善大使に就任した折、友人からフックスの著作を送られたのだという。そこから自分で色々探索して、フックスのある講演のビデオにたどり着き、その語り方に感銘を受けたのだそうだ。
エマは対談中、フックスの『Feminism is for Everybody』という著作に何度か言及し、自身のフェミニズムについての考え、フェミニズムのメッセージを発信するにあたってのスタンスに関して、影響を受けたことを語っている。
フックスがフェミニズムについての読みやすい、シンプルな本として執筆したというこの著作は邦訳も出ており(『フェミニズムはみんなのもの』)、同書の序文を見てみると、たしかにエマのスピーチに通じるような、「フェミニズム運動は男性に反対する運動ではな」く、フェミニズムに触れることによって「男性たちが変わり、成長する可能性」「自分自身が家父長制の束縛から解き放たれる希望」があるとして、(女も男も)フェミニズムの近くに来て、それを知ろう、と呼びかける主張が出てくる。エマのスピーチに興味を持ち、(ポジティブにであれネガティブにであれ)反応するところがあった人は、一度手にとってみてもいい本かもしれない。