連載

母親に趣味を禁じられたOLが戦う、「女の子らしさ」という呪縛 丹波庭『トクサツガガガ』

【この記事のキーワード】

オープンオタクで多様な友人作り

 2005年に講談社漫画賞や文化庁メディア芸術祭にノミネートされた木尾士目先生の名作『げんしけん』(講談社)や累計発行部数850万部を突破して現在大人気の渡辺航先生による『弱虫ペダル』(秋田書店)など、オタクを主人公にした作品は今日それほど珍しくはありません。かつてアニメやゲームが好きなだけで変わり者扱いされて排除されるような時代はあったのかもしれませんが、特定のコンテンツを愛好するという意味での「オタク」という生き方は、それだけで好奇の目にさらされるという根拠にはもはやなりにくくなっているようにも感じます。

 しかし叶は自身がオタクであることがバレるのを極端に恐れており、本作でも、オタクを隠すためのノウハウやオタクのつらさ「あるある」の紹介に本作序盤の紙幅が多く割かれています。女性で「特オタ」という特殊状況を踏まえたとしても、気にしすぎなようにも思えてきます。

 現代社会において女性かつオタクであることはどのような位置付けを持つのでしょうか。「特オタ」にピンポイントで迫ることは難しいのですが、アニメや漫画、ゲームなどを中心に社会状況の変化を把握することは作品の理解につながるようにも思います。さっそくデータを参照してみましょう。

図1(※クリックで拡大) 「流動化社会における都市青年文化の経時的実証研究http://jysg.jp/research.html」 より編集部作成

図1(※クリックで拡大) 「流動化社会における都市青年文化の経時的実証研究」 より編集部作成

 図1は2002年と2012年の調査においてあげた文化的トピック10個のうち、「最も関心がある文化ジャンル」として支持された割合を男女別に示したものです。2002年においてもっとも関心を集めていたのは男女ともに音楽で、テレビゲーム、漫画、アニメという「オタク」的なコンテンツはぐっと低くなっています。男性に比べて女性はさらに低い数字となっていて、ゲームやアニメは1%程度の人しか挙げていませんでした。

 2012年になると、ゲーム、漫画、アニメが数字を伸ばすようになります。しかし男性に比べれば女性の数字は半分程度で、漫画はもちろん、アニメやゲームを「最も関心がある」とする女性は相対的に見ていまだ少数派のままといえるでしょう。経験的にも「そりゃそうだ」という気もしますし、現在26歳の叶が「自分は少数派だから隠れていなくてはならない」と考えるのも、数字的に考えれば無理もないのかもしれません(それにしては気にしすぎのようにも思いますが)。

1 2 3 4

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。